国内では、一般的に経済産業省の高調波抑制対策ガイドラインに基づいて高調波流出電流を計算していますが、より正確に高調波歪率(合計および高調波次数ごと)、通信線への影響などについて検討するための計算手法について教えて下さい。高調波による影響を判定するための高調波の指標についても教えて下さい。
電力系統の高調波は「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」(1994年に資源エネルギー庁より通知、2004年改定)でその上限値が規定されています。
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)およびIEEE std 519 による高調波電圧歪率および電流歪率(高調波流出電流)に関する上限値については、各々、先の「質問番号2020-0049 および 2020-0050」に対する「回答」をご参考にして下さい。
電力系統の高調波が、この基準を満たしているかどうかは、系統が簡単な場合、簡易的な計算が行えますが、複数の高調波発生源と高調波フィルタなどからなる複雑な系統の場合、高調波シミュレーションプログラムで計算を行う必要があります。MATLABなどを使いシミュレーションを行うことも可能ですが、etap のような電力系統解析プログラムを使うとより、潮流解析、電圧降下、短絡電流に加え、高調波の計算を行うことができます。etap では整数時高調波に加え、非整数時の高調波についても検討できるようになりました。 詳しくは etap のマニュアルを参照下さい。
なお、高調波に非整数時の高調波が含まれているときの指針は JIS C 61000-4-7 に記されています。 JIS C 61000-4-7 第4-7部: 試験及び測定技術−電力供給システム及びこれに接続する機器のための高調波及び次数間高調波の測定方法及び計装に関する指針で, IEC 61000-4-7 を基に作成した日本工業規格です。この規格は,50 Hz及び60 Hzの電力供給システムの基本波に重畳する 9 kHz以下の周波数範囲内のスペクトル成分を測定することを目的とする計装に適用されます。この規格では,高調波,次数間高調波,及びそれ以外の高調波周波数範囲(約2 kHz)を超え 9 kHz以下の成分を区別しています。
(以上、電機メーカーの方からの回答です)
参考:
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)については、JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)EMC共通技術専門委員会の下記のURL をご参照下さい。
URL : https://home.jeita.or.jp/anzen/taisaku2/pdf/02.pdf
高調波による影響を判定するための高調波の指標については、添付ファイル File No. 高調波の指標.pdf をご参照下さい。
この資料は、電力系統解析ソフトウェア etap の高調波解析モジュールのマニュアル (User Guide) からの抜粋です。(etap については株式会社エルテクス設計にお問合せ下さい)