Q&A 2021-0138で突入電流の意味と突入電流が発生する要因について説明して頂きました。引き続き、突入電流による電気機器および設備への影響と対策について教えて下さい。
ご質問の突入電流による電気機器および設備への影響と対策について説明します。
A. 突入電流による電気機器および設備への影響
Q&A 2021-0138で説明したように、電動機の場合、電源系統側の瞬時電圧低下(瞬低)後に電動機回路の電磁接触器などが離落しそれを再投入した場合、電動機巻線内に残留電圧が残っていて、かつ系統電圧との位相差が大きい場合、瞬時ですが、通常の始動電流(定格電流の5~7倍程度)の2倍近い突入電流 (Inrush Current) が流れます。
また、点検等で停止している変圧器(電力系統から切り離している変圧器)を使用するために電圧を印加した時に、変圧器鉄心内部の残留磁束と電力系統側の電圧との投入位相に起因する磁気飽和により、過渡的に変圧器の定格電流の3~6倍程度の大きな励磁突入電流が流れます。
このような突入電流が流れる事を考慮していない場合、① 電源スイッチ接点の溶着 ② ヒューズの溶断 ③ 配線用遮断器のトリップ ④ 電磁接触器の離落 ⑤ 整流回路などへの悪影響 ⑥ 保護リレーの誤動作 ⑦ 電源電圧の不安定化(電圧降下等)およびそれに伴う電源を共有する機器などへの影響、などが生じる恐れがあります。
B. 突入電流に対する対応策
突入電流に対する対応策としては、① あらかじめ突入電流の大きさを計算する ② 突入電流の大きさに電源容量や素子を用いる ③ 突入電流そのものを抑制する方法を検討する、など安全で経済的な対策の立案が肝要です。
化学工場などのプロセスプラントでは、電源系統側の瞬時電圧低下後に電動機が再始動する時に、電動機の再始動電流(突入電流)により電磁接触器が再離落し、プロセス上重要な数台の電動機の停止により工場全体が停止するというようなトラブルに至る恐れがあります。
瞬時電圧低下に対する対応策については、Q&A 2021-0092, 0097~0100 をご参照下さい。 変圧器の励磁突入電流現象とその対策については、Q&A 2021-0140 をご参照下さい。
また、下記のようなサイトもご参考にして下さい。
(参考資料)
[1] Wikipedia、突入電流
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AA%81%E5%85%A5%E9%9B%BB%E6%B5%81
[2] 村田製作所、突入電流って何?
https://article.murata.com/ja-jp/article/what-is-inrush-current
[3] 電気設備の知識と技術、突入電流
https://electric-facilities.jp/denki7/to/011.html
[4] 変圧器励磁突入電流(インラッシュ電流)によるトラブルとその対応、公益社団法人 日本電気技術協会 https://jeea.or.jp/course/contents/07304/
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田)