地熱発電についての定義,長所と短所などについて教えて下さい。地熱発電設備としてのシステム構成,国内および海外での利用状況 (発電量など),および地熱発電の今後の可能性などについても紹介して下さい。
1. 地熱発電の定義
日本は火山帯に位置するため,地熱利用は戦後早くから注目されていました [1]。マグマの熱で高温になった地下深部(地下1,000~3,000m 程度)において,地表面に降った雨や雪が地下深部まで浸透し,高温の流体(地熱流体)となります。これが溜まっているところを地熱貯留層と言います。地熱発電は,地熱貯留層より地熱流体を取り出し,タービンを回転させて電気を起こします [2]。
2. 地熱発電の長所と短所 (文献 [1] より引用)
<長所>
(1) 持続可能な再生可能エネルギー 地下の地熱エネルギーを使うため,化石燃料のように枯渇する心配が無く,長期間にわたる供給が期待されます。
(2) 昼夜を問わぬ安定した発電 地下に掘削した井戸の深さは1,000~3,000mで,昼夜を問わず坑井から天然の蒸気を噴出させるため,発電も連続して行われます。
<短所>
地熱発電所の性格上,立地地区は公園や温泉などの施設が点在する地域と重なるため,地元関係者との調整が必要なことが課題として挙げられます。
3. 地熱発電のシステム構成
発電方式として,フラッシュ発電やバイナリー発電があります。 フラッシュ発電は,主に200℃以上の高温地熱流体での発電に適しており,地熱流体中の蒸気で直接タービンを回します [2]。バイナリー方式は,地熱流体の温度が低く,十分な蒸気が得られ ない時などに,地熱流体で沸点の低い媒体(例:ペンタン,沸点36℃)を加熱し,媒体蒸気でタービンを回して発電するものです [1]。新エネルギーとして定義されている地熱発電は「バイナリー方式」のものに限られています。
4. 国内,海外での利用状況,発電量
日本で稼働中の地熱発電所の設備容量は合計約52万kW,世界第10位です(2016年6月現在)[2]。
5. 地熱発電の今後の可能性
火山国である日本は,アメリカ,インドネシアに次ぐ,世界第3位(2,347万kW相当)の地熱資源大国です。国内で稼働中の地熱発電所の出力は,36地点で合計約52万kWと,地熱資源量のわずか2.2%です(2016年6月現在)[2]。 第6次エネルギー基本計画では,2030年度の野心的水準として,1.5GW,110億kWhの導入が見込まれています[3]。
(参考文献)
[1] 資源エネルギー庁 「なっとく!再生可能エネルギー」 (地熱発電) https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/geothermal/index.html
[2] 日本地熱協会 「地熱発電に関する情報」 https://www.chinetsukyokai.com/information/
[3] 資源エネルギー庁 「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」 (関連資料) https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_03.pdf
(名古屋工業大学 准教授 青木 睦 記)