電気機器の耐電圧 (絶縁強度) と雷サージとの関係について教えて下さい。 雷サージが機器の耐電圧を超えてしまう場合の対策はどうすれば良いでしょうか?
一般的に,高電圧設備やオフィス,工場などで使用される機器は,交流電圧(AC)試験による耐電圧(絶縁強度)を有しており,機器の耐電圧設計は使用する電圧により決まっている。この耐電圧は,雷サージ等の急峻な電圧でのインパルス耐電圧とは異なる。一般的には,安全を保障するために,耐電圧試験を実施するように規定されているが,インパルス耐電圧試験は高電圧に接続されるような機器にのみ実施されているのが実態である。
配電系高圧設備では,一般の機器に比べて耐電圧性能は大きく設計されており,雷サージ等の過電圧に対する絶縁協調を考慮した機器の設計と避雷器の設置が行われている。
低電圧設備における過電圧については、JIS C60364-4-44 にインパルス耐電圧のカテゴリーが規定されている。機器ごとの実際のインパルス耐電圧は,機器メーカーに問い合わせなければならないが,不明の場合は,指標としてこのカテゴリーの耐インパルス電圧をもとに SPD を選定することとなる。
機器にインパルス耐電圧を超えるような過電圧が加わると,絶縁破壊を起こして,誤作動または破壊が発生する。近年,情報通信機器のネットワーク化に伴って,これまで雷害とは無縁であった機器でも,雷害が発生するようになっている。それは,一般家庭において使用されている家電製品も同様であり,雷害が増加する傾向にある。
図1 は,機器が雷サージなどにより機器の耐電圧以上の過電圧を受け,絶縁破壊するイメージを図示したものである。図2 は,避雷器または SPD により過電圧から機器が保護される様子をイメージした図である。避雷器または SPD が動作することによって,雷サージを機器の耐電圧以下に抑制し,機器が破壊することを防いでいる。
ここで重要なことは,機器の耐電圧と避雷器または SPD の抑制電圧との関係であり,避雷器または SPD の抑制電圧が機器の耐電圧以下となるように選定,設置することが重要である。
詳細は「SPD・避雷器と耐雷トランスを 用いた雷保護」オーム社(2015−6)に記載されているのでご参照下さい。
(中部大学 教授 山本和男 記)