耐雷トランス(LIT: Lightning Isolation Transformer)とは,通常のトランスと異なり,1次巻線と2次巻線間に絶縁処理を施し、耐電圧性能を向上させたトランスです。SPD により雷電流をスムーズに大地に放出するとともに,雷サージを侵入させたくない部分に LIT を用い,被保護機器をより確実に雷から保護するものであります。
一般的な電源用の LIT のインパルス耐電圧は30kV程度のものが多く,用途によってはさらにインパルス耐電圧が高い製品も存在します。 通常の LIT は,誘導雷を想定して適用されることが多く,直撃雷や接近雷等を想定していない場合も少なくありません。しかし,LIT のインパルス耐電圧を超えるような雷サージが発生する場合を想定して、SPD を LIT と併用し,SPD を介して雷サージを放出できるようになっている耐圧保障形の LIT(図1)も販売されています。
2004年に SPD の JIS 規格が発行される以前は,日本では耐雷対策手法の一つとして広く使用されていました。JIS 規格では基本的に,SPD による等電位ボンディングで雷対策を行うことが推奨されています。上記のような状況により,それまで LIT が利用されていた一部の現場では,SPD を用いた等電位ボンディングを用いた対策に置き換えられることが多くなりました。
一方、大手通信事業者では ECM の観点からも LIT を用いた絶縁方式による対策が採用されている例もあります。その対策で使用されているのは通信用の LIT で、このように,現在では LAN 用の LIT も製品化されるようになりました。
詳細は「SPD・避雷器と耐雷トランスを用いた雷保護」オーム社(2015−6)に記載されているのでご参照下さい。
(中部大学 教授 山本和男 記)