中小水力発電についての定義、長所と短所などについて教えて下さい。 中小水力発電設備としてのシステム構成、国内および海外での利用状況(発電量など)、および中小水力発電の今後の可能性などについても紹介して下さい。
1. 中小水力発電の定義
中小水力発電は,水の力を利用して発電する水力発電の中でも中小規模のものを言います。我が国では最大出力30,000kW未満のものを中小水力と称することが多いです [1]。また,概ね10,000kW以下のものを小水力と呼ばれています [2]。
日本の法律では、1,000kW以下と1,000kWを超える水力が明確に区分されています。1,000kW以下の水力発電は、新エネルギー法の施行令改正により,「新エネルギー」に認定されています。RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)では,1,000kW以下の水力発電は,RPS法の対象となっています [2]。
「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ法)」では,最大出力30,000kW以下ともされています [3]。また,30,000 kW未満の中小水力発電を対象とする「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が平成24年7月から始まっています [4]。
2. 中小水力発電の長所と短所
中小水力発電は,昼夜,年間を通じて安定した発電が可能で,出力変動が少ないという長所があります。一方,短所として,設置地点が限られる(落差と流量がある場所に限定される)ことや,水の使用について,利害関係が付きまとうこと,法的手続きが煩雑で面倒であることなどがあります [2]。
3. 中小水力発電設備としてのシステム構成
発電方式の分類では,「流れ込み式」,または「水路式」となります。大規模ダム(貯水池式),中規模ダム(調整池式)ではなく,河川の水を貯めること無く,そのまま利用する発電方式です。一般河川、農業用水、砂防ダム、上下水道など、現在無駄に捨てられているエネルギーを有効利用します [2]。
設備は規模よって異なりますが,取水設備,ヘッドタック,水車,発電機,変圧器,制御装置などで構成されます。 中小水力発電で利用する水の種類として,渓流水,農業用水,上下水道,工場内水などが考えられています [4]。
4. 国内および海外での利用状況 (発電量など) と中小水力発電の今後の可能性
文献 [5] によると,2013年度時点における包蔵水力(我が国が有する水資源のうち、技術的・経済的に利用可能な水力エネルギー量)のうち,これまでに開発された水力エネルギーは,1,936地点、最大出力の合計22,278,414 kWであり,このうち,出力区分が1,000 kW未満については,512地点、最大出力の合計216,536 kWとなっています。
環境省が「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」で行った設備容量3万kW 未満の中小水力発電を対象としたポテンシャル等試算結果から,中小水力発電の国内賦存量は,河川部で1,655万kW,農業用水路で 32万kW,導入ポテンシャルは河川部で 1,398万kW,農業用水路で 30万kW と試算されています [4]。
また,「再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度」が導入されることを想定した場合のシナリオ別導入可能量についても推計されており,その結果,河川部で 90万~406万 kW,農業用水路で 16万~24万kW と試算されています [4]。
<参考文献>
[1] 平塚:「地球温暖化対策としての中小水力発電の推進」、電気設備学会誌、Vol.32,No.4 (2012)
[2] 全国小水力利用推進協議会 「小水力発電とは」 http://j-water.org/about/
[3] 松尾:「小水力発電の普及と展望」、電気設備学会誌、,Vol.32,No.4 (2012)
[4] NEDO 再生可能エネルギー技術白書(第2版)
[5] 国土交通省 資源としての河川利用の高度化に関する検討会、 第1回配布資料 「小水力発電の現状について」
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shigenkentou/dai01/pdf/s07.pdf
(名古屋工業大学 准教授 青木 睦 記)