大容量(5~15MW)同期電動機のオーバーホール時に、極間つなぎ線が断線しているというトラブルを発見しました。 同様のトラブル事例がありましたら、その状況、原因、対応策などについてご教示下さい。
当社でも11KV, 5MWクラスの同期電動機(6極突極機)で同様のトラブルを経験した事があります。トラブルの状況と修理、トラブルの原因、今後の対応策についてまとめてみましたので、ご参考にして下さい。
1. トラブルの状況と修理
弊社ではメーカーに依頼してオーバーホールを行いましたが、工場出荷前の最終検査で、界磁コイルに導通が無いという異常が発見されました。異常部位を調査したところ ① No.5磁極の極間つなぎ線がコイルの口出し部で断線していた。 ② さらに調査を進めたところ、No.3磁極の同じ個所が断線寸前の状態であった。 ③ また、No.1磁極についても以前に同様のトラブルが発生していたという記録が残っていた。
これらのトラブルに対して、トラブル ① では磁極を取り外して予備コイルと入れ替えた、トラブル ② および ③ では断線部を応急的に補修した。 その後の本格的な対策として、回転子コイル巻替え時に軸方向で接続するように構造を変更した。
2. トラブルの原因
起動時の起動電流による回転子コイルの温度上昇によってコイルの熱膨張が発生し、磁極コイルの伸び方向の違いから極間つなぎ線軸方向の応力が発生し、疲労により亀裂が発生・断線に至ったものと思われる。
3. 対応策
電動機の寿命はストレスの大きさに依存する。ここで紹介したトラブルを生じた電動機は、排風用ブロワ用であり起動時間が長い。このように起動時間が長い電動機や、運転上起動/停止が多い電動機は特に注意が必要である。
このようなトラブルを未然に防ぐためには、定期的な健全性診断が必要である。健全性診断技術として、① 電圧降下法(100A通電)、② メカニカルハンマーリング試験(共振周波数測定)、③ UST検査法が考えられる。
これらの診断を実施した結果として、診断方法 ② は極間つなぎ線の口出し部の絶縁物の緊迫度の影響が大きい、診断方法 ③ は極間つなぎ線に絶縁処理が施されているため診断ができないなどの結果から、診断方法 ① の電圧降下法が最も効果的な方法であった。
最後に、
このトラブル事例は、極間つなぎ線の断線事故であったが、① 起動時間の長さ、② 電圧降下と起動時間の関係、③ 運転条件による起動/停止の頻度、④ 瞬低再始動による影響、⑤ 高調波による影響などによる、 極間つなぎ線だけでなく、他の部位や部品などの機械的強度についても検討することが必要である。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)