400V系統で地絡事故が発生し、この事故により、事故が起こっていない VVVF 盤に電源を供給している健全のフィーダがトリップした。同様のトラブル事例がありましたら、その状況、原因、対応策などについてご教示下さい。
弊社の同様のトラブル例を基に説明します。
1. 事故の状況
図1-24 に示す400V系統で、図中の地絡事故点にてR相1線地絡事故が発生した。 ➀ 本来であれば事故が発生したフィーダの ELR(漏電継電器)が動作して MCCB がトリップし、事故を解除できるはずであった。 ② しかし、事故が発生したフィーダだけでなく、この地絡事故に伴い、他の VVVF 盤に電源を供給している健全なフィーダ(事故が起こっていないフィーダ)も同時にトリップした。
2. 事故の原因
地絡事故点にてR相1線地絡事故が発生した場合、図1-24 に示すように400V系統内に地絡電流が流れる。事故の状況の ② については、調査の結果、この地絡事故でトリップした400V系統の健全フィーダには VVVF 盤が設置されており、ノイズ低減用CRフィルタからの大きな大地充電電流 (Ic) が電源側に向かって流れ、この値が ELR の設定値を超え、健全フィーダである VVVF 盤への電源フィーダの MCCB がトリップしたと考えられる。
3. 事故の状況 ② についての対応策
検討の結果、VVVF 盤のノイズ低減用 CR フィルタからの大地充電電流 (Ic) を ELR の設定値(200mA, 0.1sec) の 50% 以内に収まるように、CR フィルタのコンデンサの容量を小さくした。 コンデンサの容量を下げると、当然、インバータのノイズ低減効果が減少するため、図1-25 に示すように、フェライトコアの数を増やして現状と同等のノイズ低減効果を確保できるようにした。なお、R相 が地絡した場合、健全相である S相 および T相 の大地充電電流の合成充電電流 Ic は、S相およびT相の充電電流をそれぞれ Ics および Ict とすると、図1-26 に示すように計算できる (完全地絡時) [1]。
補足 [1] : 系統中のケーブル、フィルタ、力率改善用コンデンサなどの静電容量による大地充電電流を考慮した総的な地絡電流計算を行うために、etap のような系統解析ツールを用いることをお勧めします。