これまでの Q&A を見ると、質疑応答 2021-0138 「突入電流とは?」 および 2021-0139 「突入電流による影響と対策」 などがアップロードされており、突入電流についての説明がありますが、「受電用変圧器の課電開始時に発生する励磁突入電流現象」について、もう少し具体的に説明して下さい。 励磁突入電流発生のメカニズムについても説明して下さい。
ご質問の変圧器を課電した時の「励磁突入電流現象」、および「励磁突入電流発生のメカニズム」について説明します。
1.励磁突入電流現象
励磁突入電流現象は、変圧器を課電した時に変圧器の一次側に過大な電流が生じる現象の事です。 最大で変圧器定格電流の約10倍もの電流が流れる可能性があり、変圧器一次側母線の電圧低下 (系統インピーダンスによる)、電流不平衡、波形歪を伴う過渡的現象で、その継続期間が落雷などによる障害に比べて長く、近傍の広範な負荷系一帯(公共施設、工場、一般需要家設備など)の動力系、制御系、保護系に様々な障害をもたらします。
図1に、変圧器を遮断器 Br1 を投入して課電した際に流れる励磁突入電流と変圧器一次側母線の電圧低下の波形の一例を示します。
2.励磁突入電流発生のメカニズム
励磁突入電流は、変圧器一次側の遮断器を開路するなどして変圧器を停止した時の残留磁束と、次に変圧器を再課電した時の電圧位相角に大きく起因します。 ここで、電圧位相角とは、変圧器課電時の交流電圧がどの位置にあるかを角度で表現した値であり、残留磁束とは、変圧器の停止操作時に鉄心に残された磁束のことです。 磁束は電圧を時間積分することで求められ、電圧波形より90度遅れた波形となります。
図2に、電圧と残留磁束及び励磁突入電流の模様を示します。 図2(a) のように課電操作のタイミングにより磁束が飽和域を超過する場合があり、磁束が超過した分だけ励磁突入電流が流れます。 また 図2(b) のように磁束の飽和域を逸脱しない電圧の位相角で課電された場合は、励磁突入電流は発生しません。
(株式会社興電舎の方からの回答です)