発電機固定子の対サージ電圧(雷過電圧)保護限界として、一般的に、タービン発電機固定子コイルの耐電圧値である、JEC-2130-2016〔同期機〕の〔耐電圧試験〕に規定された1分間対地商用周波耐電圧値 2E+1〔kV〕が用いられています(Eは定格電圧、11kV以上の場合は2E+3〔kV〕を採用するメーカーもある)。
この耐電圧値 2E+1〔kV〕は、固定子コイルの巻替基準として用いられていますが、対サージ電圧(雷過電圧)としては経験則に基づいたものであり、雷過電圧の影響を評価するなどして算出された合理的な値ではないとされています。 JEC(電気学会 電気規格調査委員会標準規格)などで〔発電機に雷インパルス耐電圧試験が要求されていません〕が、その理由として、発電機(同期機)は電力会社の系統に直接接続されることはなく、変圧器を介して接続ことが多く、非常用発電機は系統と切り離して接続されるので、雷の影響を受ける可能性が低いためとされています。
そこで知りたいのが、〔送電線に落雷した雷過電圧が発電機の昇圧用変圧器を介してどのくらい減少するか〕ですが、これを EMTP(Electro-Magnetic Transients Program)で解析し検証した例が下記の Web Site に載っていますのでご参考にして下さい。
https://www.chuden.co.jp/resource/seicho_kaihatsu/kaihatsu/kai_library/news/news_158_13.pdf :火力発電所のタービン発電機固定子コイルに発生する雷過電圧評価(電力技術研究所)
同期機の耐電圧試験
JEC-2130-2016〔同期機〕に〔耐電圧試験〕として、耐電圧試験の試験時間および試験電圧が規定されています。 11.2.3項に 試験電圧、11.2.5項に 試験時間が規定されています。 表15には、定格10,000kW(kVA)以上の場合、定格電圧 VN≦24,000V : 2VN+1,000V、VN>24,000V : 受渡当事者間の協定による、となっています。 試験方法や詳細な規定については関連する規格や法規をご参照下さい。 なお、発電機に雷インパルス耐電圧試験の要求はありません。
変圧器の雷インパルス耐電圧試験
JEC-2200-2014〔変圧器〕に〔耐電圧試験〕として、短時間交流耐電圧試験(誘導試験、加圧試験)および長時間交流耐電圧試験に加え、雷インパルス耐電圧試験に関する規定があります。 雷インパルス耐電圧試験とは、変圧器などの電気機器が雷などによる衝撃電圧に対してどれだけ耐えることができるかを評価する試験です。 この試験では、落雷時に機器に侵入する可能性のある雷インパルス電圧に似た波形の電圧を機器に加え、その絶縁耐力を確認します。 試験方法や詳細な規定については関連する規格や法規をご参照下さい。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)