統合接地と等電位ボンディングについての用語の意味、統合接地の必要性、および統合接地の設計における主なポイントについて説明して下さい。
統合接地と等電位ボンディング
〔統合接地〕<Note 1> とは、様々な目的で設けられる接地を一つの接地システムに統合することを言います。 様々な接地を一つのシステムとして構築し、各々の接地系に求められる機能・性能をより高いレベルで実現しようとしたものです。 構築のねらいは、等電位、低接地抵抗化 <Note 2>、システムの単純化などが考えられます。 接地の管理も容易になり施工のコストも抑えられます。
〔等電位ボンディング〕 とは、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の建物において、導電性部分間において、その部分間に発生する電位差を軽減するために電気的接続を施したものをいいます。 電技解釈で定められたA種~D種接地工事のみならず、当該建物の鉄骨又は鉄筋その他の金属体全てをボンディングすることで地絡事故時に発生する各所の電位差を無くし(等電位化)、感電に対する人体保護を目指します。 等電位ボンディングと言っても目的によって様々な方法があり、呼び名も異なります。また、統合接地とは異なり、それぞれ規格などで定義づけされています。
〔等電位ボンディング〕および〔雷等電位ボンディング〕については、質疑応答 2020-0040〔等電位ボンディング〕、2023-0230〔接地工事の種類と等電位ボンディング〕、および 2024-0295〔等電位ボンディングと雷等電位ボンディング〕 も併せてご参照下さい。
<Note 1> このQ&Aコミュニティでは、〔電気設備技術基準の解釈(電技解釈)第17条〕 で規定されているA種~D種接地工事に加え、これらの電気設備用の接地 (電技解釈で定められた接地) 以外の目的の接地 (例えば、外部雷保護システムの接地や静電気用接地など) を1つにまとめた接地システムに接続することを〔統合接地〕と捉えて説明します。
<Note 2> 統合接地は、高周波電流が流れる機器にも対応させようとするもので、場合によっては低インピーダンスとなるような接地線のも考慮します。 従って、場合によっては 「低インピーダンス化」 という方が正確です。
統合接地の設計における注意点
統合接地の設計における注意点(統合接地のデメリット)は以下の通りです。
- 接地抵抗の値 : 統合接地とする場合は、低抵抗値(例えば2Ω以下)を求められることが多くみられます。(統合接地する場合の接地抵抗値に関する規定については、質疑応答 2021-0160〔知っておきたい関連規格〕参照)
- 接地機能が一つ : 接地システムが一つであるため、その機能が失われると全ての接地の機能が失われます。
- 地絡電流の制限 : 統合接地は、変圧器2次側のB種接地と機器接地のC種およびD種接地が電気的に接続されているため、低圧側での地絡事故が発生した場合地絡電流が大きくなる可能性があります。(B種接地を統合接地する場合の注意点については、質疑応答 2024-0297〔統合接地とB種接地の関係〕参照)
- ノイズの回り込み : 接地システムが一つであるため、接地線を介してノイズが回り込むケースがあります(ノイズ発生源がどこにあるかによる)。
- 〔統合接地〕は定義化されたものではない : 統合接地は、様々な接地を一つのシステムとして構築し、各々の接地系に求められる機能・性能をより高いレベルで実現しようとしたものです。 しかしながら、用語の定義については決められたものがないのが現実で、人によって捉え方が異なるケースがあるので注意が必要です。(建物全体の等電位化については、質疑応答 2024-0298 〔等電位ボンディングとSPDの適用〕参照)
参考: 質疑応答2024-0295〔等電位ボンディングと雷等電位ボンディング〕に記載の Web Site に〔統合接地と等電位ボンディング〕について〔図解〕入りで、分かり易い説明がありますのでご参考にして下さい。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)