質疑応答 2024-0311〔バッテリー・エネルギー貯蔵システム(BESS:Battery Energy Storage System)〕で、BESS とは何か、BESS の用途と活用、BESS の特徴と機能について説明して頂きましたが、引き続き、BESS の普及状況、BESS 関連の企業などについて説明して下さい。
ご質問の BESS の普及状況、BESS 関連の企業に加え、BESS の主な利点、日本国内で BESS 市場が拡大している理由など、今後の BESS の動向について説明します。
BESS の主な利点
BESS (Battery Energy Storage System) は、① 電力供給の安定化、② 再生可能エネルギーの有効活用、③ 送電網の周波数調整と電圧制御など、様々な用途で活用されています。 BESS の主な利点を纏めると以下のとおりです。
- 再生可能エネルギーの統合 : BESS により、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを効率良く利用することができます。 充電式電池は、断続的に発生する再生可能エネルギーの余剰電力を蓄えることができ、電力が不足した時に、このエネルギーを需要家のニーズに応じて分配できます。
- エネルギー裁定取引 : 電力市場においては、電力の供給と需要のバランスにより価格が変動します。 この価格の変動を利用して、価格が低い時間帯に電力を購入(または生成)し、価格が高い時間帯にそれを販売することで利益を得ることができます。 BESS は、このような取引を支援します。
- 負荷管理 : BESS は、再生可能エネルギーによって発電された余剰エネルギーを蓄電し、① ピークカット(電力消費がピークに達した時に、蓄電した電力を使用して電力のピークを抑制する)、② 負荷シフト(電力の需要が低い時間帯に電力を蓄電し、需要が高い時間帯にそれを放出する)、③ スマートエネルギー管理(電力の供給と需要のバランスをとるために、電力の使用を最適化する)、などの方法で負荷管理を行い、需要家を支援し、エネルギー消費を調整します。
- ブラックスタート : BESS は、発電所や電力グリッドにおける停電時の迅速な復旧に役立ちます。
- 電源バックアップ : BESS は、家庭や企業、その他の施設にエネルギーを供給し、その継続的な運営を可能にします。
- 電力供給の安定化 : BESS は、電力供給のトラブル時に1秒以内で対応することが可能となります。
- 再生可能エネルギーの導入を後押し : BESS は、再生可能エネルギーの導入を後押しし、温室効果ガスの排出を最小限に抑えることに貢献します。
日本国内で BESS 市場が拡大している理由
再生可能エネルギーの拡大に伴い、日本の BESS 市場は大きな成長を遂げています。 BESS 市場が拡大している理由を纏めると以下のとおりです。
- 再生可能エネルギーの目標: 日本は再生可能エネルギーの導入を増やす目標を設定しており、これが BESS 市場の成長を推進している。
- 電力網の安定化: 再生可能エネルギーの導入が増えると、電力網の安定性が問題となることがあります。BESS は、電力網の安定化に寄与するために、その需要が高まっている。
- 政策と規制の変更: 政府は分散型エネルギー資源の利用を促進するための制度を設けており、これが新たな収益源や市場機会を生み出している。
- 再生可能エネルギーの統合: 再生可能エネルギーの統合が進むことで、BESS の新たな収益源や市場機会が生まれている。
- 技術の進歩: 技術の進歩により、信頼性の高いエネルギー貯蔵ソリューションが求められ、市場の拡大と革新が促進されている。
これらの要因により、日本の BESS 市場は大きな成長を遂げています。 これらの具体的な市場動向や最新の情報については、関連資料や専門家の意見を確認することをお勧めします。
再生可能エネルギー設備への BESS の設置率
再生可能エネルギー設備への BESS の設置は、その地域のエネルギー需要、電力供給の安定性、コスト、技術的な制約など、さまざまな要因により検討されています。 再エネの導入は進んでいますが、全ての再エネ設備に BESS が設置されているわけではありません。 例えば、日本の再エネ電力比率は2021年度で約20.3%であり、再エネ発電設備容量は世界第6位、太陽光発電は世界第3位です。 しかし、これらの設備全てに BESS が設置されているわけではなく、具体的な設置率は公表されていません。
BESS の設置は、再エネルギーの導入が飛躍的に進んでいる地域や、再エネルギー源の成長にともない、火力発電所が段階的に廃止されている地域で進んでいます。 例えば、ドイツでは、総ピーク出力90MW、総容量138MWhという世界最大級の BESS が導入されています。 また、英国では、発電のピーク時に電力を貯めておき、需要のピーク時に電力を解放することによって送電網の周波数を安定させるために、全国で200MW規模の BESS 導入を進めるプロジェクトが進行中です。 これらの情報については、必要に応じて最新の関連機関の情報をご覧いただくことをお勧めします。
BESS 関連の企業
再生可能エネルギーの拡大に伴い、世界的に BESS 市場が拡大し、開発競争が激しくなっています。 国内の企業としては、三菱重工、Nidec、東芝三菱産業システム、パシフィコエナジー、日本工営エネルギーソリューション、IHI などが、海外の企業としては、ABB、テスラ、BYD、Fluence、Wärtsilä などの企業が参画しています。 これらの企業は、エネルギー貯蔵システムの製造における主要なプレーヤーとなっています。 ただし、各企業の製品やサービスは異なるため、具体的な製品やサービスについては、各企業の Web Site や関連資料を参照するなど、最新情報を確認することをお勧めします。
BESS のシステムとしての概要の例として、Nidec(ニデック株式会社) のWeb Siteをご参考にして下さい。 https://www.nidec.com/jp/technology/casestudy/bess/
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)