JIS C 4441:2021〔電気エネルギー貯蔵システム – 電力システムに接続される電気エネルギー貯蔵システムの安全要求事項 – 電気化学的システム〕の中に規定された、アークフラッシュ対策に関する規定、および今後の動向について教えて下さい。 これまでにQ&A Communityで取り上げた、アークフラッシュ対策についての質疑応答についても紹介して下さい。
ご質問の件について、JIS C 4441:2021 の B.2.4項〔電気的危険源〕に、アークフラッシュについて下記のように規定されています。 関連するリンクについては、 https://jis.eomec.com/jisc44412021/11#gsc.tab=0)をご覧下さい。
『B.2.4項〔電気的危険源〕抜粋: BESS に対して作業を行う者が、50 V を超える通電部分に接触し、エネルギーレベルが 1.2 cal/cm2 (5J/cm2) (皮膚に第二度熱傷を引き起こす可能性がある) のアークにさらされる可能性のある場合の電気的危険源は、〔感電及びアークフラッシュ〕である。 火災又はその他の緊急事態にさらされた BESS への緊急対応者に対する電気的危険源に対処する必要がある。 これには、BESS の損傷部分とその周囲の水との間の短絡による〔感電又はアークフラッシュ〕の危険性が含まれる。 初期対応者は、訓練された電気作業者ではなく、また、〔充電部及びアークフラッシュ〕に直接接触するための適切な個人用防護具 (PPE) を持っていない可能性があるため、電圧及びエネルギーの許容レベルは、適切な PPE を持つ訓練された作業者に許容されるレベルよりも下げる必要がある。』
近年、再生可能エネルギー設備が増加してきているが、2021年に JIS C 4441 : 2021 が制定されたにも拘わらず、国内でアークフラッシュ対策、アークフラッシュ防護服(個人用防護具:PPE)がそれほど話題にならないのはなぜでしょうか? PPE の普及については、下記のような要因が影響していると思われます。
- コスト : PPE がまだ高価であり、そのコストは一部の企業や組織にとって負担となる可能性がある。
- 認識の問題 : アークフラッシュの危険性に対する認識がまだ十分に広まっていない可能性がある。 特に、小規模な施設や地域では、PPE の必要性が十分に理解されていない場合があります。
- 規制の問題 : JIS C 444 1: 2021 が制定されたにも拘わらず、その適用範囲や実施についての具体的なガイドラインが不足している可能性がある。
しかし、アークフラッシュ対策の必要性は高まってきており、労働安全基準の厳格化、産業の成長に伴う労働者の安全意識の向上、高品質かつ耐久性のある PPE の開発などが市場成長の要因として挙げられています。 海外では産業の発展に伴う労働者の安全意識の向上が、PPE の拡大を後押ししています。 以上のような要因から、PPE の普及は徐々に進んでいると考えられます。 これらのPPE の更なる普及を促進するためには、コストの問題を解決し、アークフラッシュの危険性に対する認識を広め、具体的な規制やガイドラインを設けることが重要となります。
海外のように、労働者の安全と健康を確保し、快適な労働環境を創出することを目的とした、労働安全衛生法(Industrial Safety and Health Act)のような法律の中に、アークフラッシュ対策についての規程が盛り込まれることが必要だと思います。
関連する質疑応答 :
この Q&A Community でも、度々アークフラッシュ対策について取り上げています。 下記のタイトルを Ctrl+Click してご覧になって下さい。
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(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)