質疑応答2020-0065〔亘長の長いケーブルと電力変換装置による高調波共振現象〕で、「ケーブルの静電容量と高調波発生源(電力変換装置)による高調波共振が生じて、電圧歪の増大、系統への高調波流出電流の増大などにより運転を継続できなくなる」というトラブル事例が紹介されています。
この質疑応答では、「計画段階において、高調波解析を行い高調波共振の有無について検討することが必要」と説明されていますが、出来ましたら改めて、① 高調波共振によってどのようなトラブルが生じるのか、② 高調波共振を防ぐための対策、③ トラブルの事例、などについて説明して下さい。
ご質問の ①②③ について、以下のように説明します。 質疑応答 2020-0065 で説明している内容および紹介している論文なども併せてご参照下さい。
1. 高調波共振によって生じるトラブル
亘長の長いケーブルを使用して大型の再生可能エネルギー発電所を系統と連系する場合、高調波共振現象が発生することがあります。 これは、ケーブルの静電容量と電力系統のインダクタンスが特定の周波数で共振し、高調波が増幅される現象で、以下のような問題が生じる可能性があります。
2. 高調波共振を防ぐための対策
高調波共振を防ぐためには、以下のような対策が考えられます。 これらの対策を講じることで、高調波共振現象を効果的に抑制し、安定した電力供給を実現することができます。
- 高調波フィルタの設置: 特定の高調波成分を除去するフィルタを設置することで、共振を抑制する。
- リアクトルの使用: ケーブルの静電容量を補償するために、リアクトルを設置する。
- 系統解析: 事前に系統解析を行い、共振周波数を特定し、適切な対策を講じる。
3. トラブルの事例の紹介
このトラブル事例の高調波共振現象は、図1 の系統図に示すように、電解装置(水を電気分解して水素を発生させる装置)と再生可能エネルギー発電所への自営線ケーブル亘長が長い系統で発生しました。 電解装置に使用される整流器が発生する高調波と同一系統内ケーブルの対地静電容量の効果により発生するものです。 総ケーブル亘長(多数本合計)が長い配電系統に、整流器を併設する場合は、系統周波数特性(F-Z特性)を確認し、共振現象を抑制する高調波フィルタ設置等の対策を講ずること必要です。 なお、詳細検討にあたって、整流器の高調波電流発生量は「高調波抑制対策ガイドライン」に示された数値ではなく、整流器メーカに確認したデータを適用することが必須です。
「高調波抑制対策ガイドライン」に示された整流器の高調波電流発生量の数値は、理想的な条件下におけるものといえます。 また、ガイドラインは、需要家から電力会社へ流出する高調波電流を抑制するものであり、需要家内の高調波に関する影響については触れていないことも認識しておくことが必要です。
以下は、上記の条件の系統を想定し、現象をシミュレーションしたものです。 共振現象は系統構成により、更に拡大することが考えられます。 本事例ではサイリスタ他励式整流器ですが、今後は新技術が採用され、自励式整流器により本課題は軽減されるもと期待されます。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)