プラントの電気設備において、制御電源系統は非接地であることを良く見かけます。これは法規的には問題ないのでしょうか? その系統で地絡が発生しても漏電検知して遮断する必要がない? 接地しないことによるメリットがあるのでしょうか?
安全に対する条件を満足すれば、非接地系統を利用することができます。 例えば、電技解釈 第24条(See Note)によれば、低圧電路を非接地系統にする場合は、B種接地工事を施した混触防止板を設けるとされています。
非接地回路では地絡が発生しても漏洩電流が帰るところがない(漏電電流が流れない)ため、一般的な漏電遮断器では動作しません。 つまり、仕組みとして漏電電流が流れないということから漏電を検知できないということになります。(特殊な漏電遮断器を除く)
接地系統と非接地系統は一長一短があるため、必要に応じて有効な方を使用します。
接地系統では、基本的に接地極(B種接地、D種接地)と漏電遮断器や漏電火災報知器と組み合わせて漏電対策を行っています。 この場合、人が電路に直接触れたり、接地に不備があると感電事故に至る恐れがあります。 よって、漏電遮断器や接地の定期的な点検、電気回路の絶縁の確認は必要不可欠です。 また、B種接地極、D種接地極(もしくはC種接地極)の施工費用や維持管理費用が必要であることです。
非接地系統では、大地との間で確実な絶縁が保たれている場合、電路を直接触っても感電が生じません。 接地極が不要なため、接地極の施工費用や維持管理費用が不要です。 しかし、電路全体が確実な絶縁を保つことが大前提になります。 長く続く電路では完全な非接地系統を確立させておくことが困難ですし、また、高電圧が低電圧電路に侵入した場合に低電圧電路の安全を保障することが非常に困難です。
元々、日本に低圧系統は非接地式電路で始まりましたが、多くの事故を起こしたため、今では接地式の電路が使用されるようになったという経緯があります。 そのため、非接地系統は1つの施設の内部など、かなり限定された電路で利用されています。
Note: 『電気設備の技術基準の解釈』より
【高圧又は特別高圧と低圧との混触による危険防止施設】(省令第12条第1項)
第24条 高圧電路又は特別高圧電路と低圧電路とを結合する変圧器には、次の各号によりB種接地工事を施すこと。
一 次のいずれかの箇所に接地工事を施すこと。(関連省令第10条): イ 低圧側の中性点、ロ 低圧電路の使用電圧が300V以下の場合において、接地工事を低圧側の中性点に施し難いときは、低圧側の1端子、ハ 低圧電路が非接地である場合においては、高圧巻線又は特別高圧巻線と低圧巻線との間に設けた金属製の混触防止板
変圧器内で高圧と低圧の巻線に絶縁不良が生じた場合、高圧と低圧の間にある混触防止板が高圧電流を受け止めて、その高圧電流をB種接地に流します。 これにより、低圧電路に高圧電流が侵入することを防ぎます。
(日本地工株式会社の方からの回答です)