オンライン診断スマート保全は、運転中のインフラや設備の状態をリアルタイムで監視し、異常を早期に検知して保全管理を行うシステムです。「運転中のデータを蓄積」することで経年的なデータ解析による停電点検・補修の適正化、劣化傾向の把握により設備更新・寿命を延ばし、メンテナンスコストを削減することができます。システム構成については、以下のようなセンサーや装置、ソフトウェアから構成されます(第1項~第5項参照)。 重要なのはオンライン診断センサーです。
1. オンライン診断センサー
(例1) 発電機固定子巻線放電、GISメタクラ配電盤放電、変圧器放電、電力ケーブル絶縁物内部放電など
Note 1: 部分放電(PD:Partial Discharge)を検出カプラはコンデンサー、アンテナ、接地線高周波CT等がある。 Note 2: 部分放電(PD)のノイズ弁別は T-F マップによる方法が報告されています。(部分放電周波数解析) Note 3: IEC 60034-27-1 などで部分放電(PD)の 位相特性図(PRPD:Phase Resolved Partial Discharge)のパターンから放電部位の様相を診断することが行われています。
(例2) 遮断器、断路器の主回路CT、開閉制御回路CTによる電流波形(開閉時間)など
(例3) モータCTによる起動電流、負荷電流解析、回転機の振動解析 など
Note 4: モータ電流の FFT (Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)解析を行い側帯波の大きさからモータのバー切れを診断する技術があります。 MCSA (Motor Current Signature Analysis) と言います。 また、電流の FFT 解析によりポンプ、ファン等の設備(トルク)異常も診断できます。
(例4) 回転機等のオゾンセンサー、温度センサー、屋外メタクラ配電盤等の温度・湿度センサーなど
2.データ収集装置 : センサーからのデータを収集し、中央サーバーに送信する装置
3. 通信ネットワーク : データを中央サーバーとやり取りするためのネットワーク(海外は通信規格 IEC61850)
4. 中央サーバー : 収集したデータを解析し、異常を検知するサーバー
5. 管理ソフトウェア : 異常を通知し、保全管理の指示を行うソフトウェア
このようなシステムを構築することで、インフラや設備の状態を常に把握し、効率的な保全管理が可能となります。 具体的には、発電機、遮断器、ケーブルなどの絶縁物の部分放電診断、遮断器の遮断電流波形、断路器等の開閉時間などの状態の監視や診断などに活用されています。上記の(例1)は、有機絶縁物の劣化(トラッキング等)は強い部分放電発生と消滅を繰り返して成長して事故に至るので「運転中の測定とデータ蓄積」が有効である。発電機メーカーの絶縁診断(部分放電)は停止状態(数年に1回)で測定するので、たまたま数値が小さく出たときには対応が遅れてしまう欠点がある。オンライン診断とメーカー絶縁診断を組合わせて管理することで事故リスク低減が可能である。
オンライン絶縁診断技術の部分放電(PD:Partial Discharge)、T-Fマップ等については、参考文献 [1]「電気設備の絶縁診断入門」、89頁、「コラム2.3 部分放電のノイズ弁別技術」をご参照下さい。
通信規格 IEC 61850 を使った SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition System)があります。メーカーによるリモート監視方法もあり、大きな放電(PD)、トリガ電流が発生した時に、直ぐに解析することも可能です。
電気保安の人材不足や設備の高経年化等、電気保安の課題に対処するため、官民でデジタル技術を活用した「スマート保安」 の取り組み(助成)をおこなっています。「オンライン診断スマート保全」は少子高齢化・人口減少など社会構造の変化のなかで、生産性向上・グローバル競争力強化のために進めるべきです。
参考文献:
[1] 「電気設備の絶縁診断入門」著者 江原由泰 江藤計介 末長清佳(コロナ社 2022年11月15日初版)、89頁、2.3項:回転機「コラム2.3 部分放電のノイズ弁別技術」:下記の資料を紹介しますのでご参照下さい。PRPD パターン(IEC 60034‐27‐1)については 87頁 により詳しく記載されていますので、併せてご参考にして下さい。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)