ヒータや電灯などの定インピーダンス負荷であれば電圧Vが電流Iに比例(電力Pは電圧Vの2乗に比例)しますが、
しかし、回転機などの定電力負荷はP=√3VIcosθが一定であることから電圧Vは電流Iに反比例します。
定インピーダンス負荷はオームの法則で説明がつきますが、
定電力負荷において、電力が一定、電圧Vは電流Iに反比例する原理がわかりません。
素朴な疑問ではありますが回答いただけると幸いです。
負荷の種類として、ご質問にあるように ① 定電力負荷 (Constant Power Load) ② 定インピーダンス負荷 (Constant Impedance Load) に加え ③ 定電流負荷 (Constant Impedance Load) があります。電力系統解析ソフトウェアetapのユーザーガイドからの抜粋(下記)をご参照下さい。(etap については、株式会社エルテクス設計にお問合せ下さい)
① 定電力負荷 (Constant Power Load)
定電力負荷には、誘導電動機、同期電動機、UPSおよび充電器などが含まれます。電力出力は、入力電圧の変化に対して一定のままです(例えば電圧が上がると電流が減る)。下図は、一定の電力負荷に対するそれぞれのI-V曲線とP-V曲線です。
② 定インピーダンス負荷 (Constant Impedance Load)
定インピーダンス負荷には、ヒーター、電灯、コンデンサおよび高調波フィルタなどが含まれます。入力電力は、入力電圧の2乗に比例して増加します。下図は、定インピーダンス負荷のI-V曲線とP-V曲線です。
③ 定電流負荷 (Constant Impedance Load)
定電流負荷は、電圧のすべての変化に対して電流が一定のままです。下図は、定電流負荷のI-V曲線とP-V曲線です。
ご質問の「定電力負荷において、電力が一定、電圧Vは電流Iに反比例する原理がわかりません」について、下図(図1)の誘導電動機場合を例に説明します。
a. 図1の誘導電動機回路のスイッチを入れると、図2のように約6~8倍の始動電流 (b) が流れ、電動機トルク (a) および力率 (c) も電動機の加速と共に図2のように変化します。また、この大きな始動電流によりケーブルのインピーダンス等による電圧降下も大きく電動機端子電圧が大きく低下します。電動機トルクは電圧の2乗に比例して低下するので電動機出力も大きく低下します。
b. このように電動機加速中(過渡状態)においては、電動機トルク、電流、力率が変化し、電動機出力も変化します。
c. 電動機が加速して、図3 のように電動機トルク(赤線)と負荷トルク(黒線)の交点で速度は一定となり電動機は加速が完了して定常運転状態に入ります。定常状態において電動機は定電力負荷、すなわち入力電圧の変化に対して一定(電圧が上がると電流が減る)になります。
(ご参考)
系統解析にて負荷をモデリングする時、各計算条件に対する初期運転条件は定常状態でなければなりません。電動機等の回転機器が定常状態であるならば速度は一定となります。速度が一定であるならば電動機トルクと負荷トルクの交点が定まっている状態です。すなわち、電動機は定常状態において電力が一定なのです。このことから、電動機を潮流計算や簡易的にモデリングする場合は定電力負荷を代用することが一般的です。