なぜ電動機始動時間の計算が必要なのでしょうか? 電動機の始動時間を計算して、どのようなことをどのように検討すれば良いのでしょうか?
「電動機始動時間の計算方法」については、質問番号2020-0084 をご参照下さい。ここでは「電動機始動時間計算の必要性」について整理してみます。
1. 電動機が始動できることを確認する。
慣性モーメント(GD2またはWR2)あるいは慣性定数(HまたはM)が大きい、始動時の電圧降下が大きく加速トルクが不足するなどの理由により ①電動機が始動できない ② 加速できない(始動渋滞が生じる)などが無いことを確認する。
2. 電動機が熱的に問題ないことを確認する。
始動時の始動電流が大きいおよび始動時間が長いなどの理由によって、電動機が熱的に問題ないことを確認する。
a. 電動機の熱的強度(I2t、HotおよびCold状態において)以内に始動できるか。
b. 電動機の保護装置が電動機の始動電流で動作せず、かつ電動機の熱的強度 (I2t) 以内に動作するよう
保護協調を正しく設定されているか(下図は電動機の保護協調の例です)。
c. 電動機を工場電気設備防爆指針による爆発危険場所で使用する場合は、
許容拘束時間(爆発性ガスに触れる恐れのある部分が温度上昇限度に達するまでの時間)以内に始動すること。 3. 電源系統や他の配電系統に悪い影響を与えることが無いことを確認する。
電動機始動時の電圧降下によって、電源系統や他の配電系統に悪い影響を与えることが無いことを確認する。
a. 電圧降下に対する一般的な設計基準は、下記の値です。
① 商用電源電圧 > 95% ② 発電機母線 電圧 > 93% ③ 電動機母線電圧 > 80%
b. 電圧が3%下がると照明器具が点滅しはじめ、5%下がると激しく点滅するなどの問題が生じる。
4. 電動機用のケーブルサイズを正しく選定する。
ケーブルの電圧降下に対する一般的な設計基準は、下記の値です。
a. 高圧ケーブル : 始動時15%以下、全負荷運転時3%以下
b. 低圧ケーブル : 始動時20%以下、全負荷運転時5%以下
5. 電動機の始動方式を検討する。
上記(1項~4項)のような問題をクリアできない場合、適切な始動方式を適用することも一つの解決方法です。
「誘導電動機の始動方式」については、質問番号 2020-0087 に対する回答をご参照下さい。