電動機の始動計算を手計算で正確に行うのはかなり困難です。電動機始動計算を正確に行うツールがありましたらご紹介して下さい。
質問番号2020-0084「電動機始動時間の計算方法」に記載した計算方法に従って手計算で概略の始動時間を求めることが可能です。しかし、下記のような誘導電動機の特性により、手計算で正確な始動時間を求めることは困難です。
a. 誘導電動機を始動する場合、定格電流の約6~8倍の始動電流が流れ、かつ始動力率が非常に低いため、
電源系統や配電系統の電圧変動の要因となり、電動機の端子電圧がかなり低下する。
b. 電動機の端子電圧が低下すると電動機のトルクが電圧の2乗に比例して低下する。
c. 電動機のトルク、電流および力率が電動機速度の上昇に伴って変化する
(質問番号2020-0084 の右図参照)。
従って、電動機の始動時間を正確に計算するには、電動機が始動開始して始動完了するまでの時間帯に亘って、系統全体の電圧降下計算を同時に進めることが必要です。そのためには特に下記のように系統のモデリングが必要です。
a. 単線系統図のモデリング(受電点から変圧器、力率改善用のコンデンサ、ケーブル、そして負荷まで)
b. 発電機がある系統では、発電機用のAVRおよびガバナのモデリング
c. 電動機等価回路のモデリング
電動機が始動できるかどうかの見当をつけるために、手計算で始動時間を計算できることは電気エンジニアにとって必須の知識と言えます。
しかし「① 手計算による結果では始動できるかどうかの判定が難しい時(より正確な結果が必要な時)② 始動時の電圧降下により他の系統や負荷に影響を及ぼすことがないか ③ 電動機を安全に保護できるか」などを正しく判断するためにダイナミックな電動機始動解析が可能なツールが必要です。このようなツールのひとつとして、電力系統解析ソフトウェア etapを紹介します。(etap については株式会社エルテクス設計にお問合せ下さい)
etapによる電動機始動解析の例について、添付ファイル File No. UG30過渡安定度解析の例.pdf をご参照下さい(Page 5/12のTS-4、Page 12/12のCase-6が電動機始動解析の例です)。