過渡安定性解析を行う場合に必要な電動機のダイナミックモデリングについて、どのようなデータが必要か、これらのデータがメーカーから入手できない場合どうすれば良いかについて教えて下さい。
過渡安定性解析で系統の安定性や電動機始動の検討を行う場合、電動機のダイナミックモデル(① 電動機の等価回路 ② 電動機および負荷のトルク特性 ③ 電動機および負荷の慣性定数)についてのデータが必要です。これらのデータは、出来るだけメーカーから入手するか、試験成績書 (Test Report) を調べて入手して下さい。
これらのデータが入手できない場合は、どうすれば良いか?
③ の電動機および負荷の慣性定数については、質問番号2020-0084 の第1項「慣性モーメント(GD2またはWR2)と慣性定数(HまたはM)の関係」のデータを参考にして下さい。
ここでは、電力系統解析ソフトウェア etap を例に、(1) 電動機の等価回路 (2) 電動機トルク特性 (3) 負荷トルク特性 の推定方法について説明します。(etapについては株式会社エルテクス設計にお問合せ下さい)
(1) 電動機の等価回路
etap には、ライブラリに下図の左から、① Single1(一重かご型非深溝)② Single2(一重かご型深溝)③ DBL1(二重かご型一体溝)④ DBL2(二重かご型独立溝)の4種類の等価回路モデルが登録されています。これらの等価回路モデルの等価回路定数が分かれば(例えばメーカーから受領できれば)、これらのモデルを用いて解析を進めることができます。
等価回路および等価回路定数が分からない(入手できない)場合は、etap の電動機の定数推定プログラムを用いて、電動機の試験成績書に記載されている7つのデータ、すなわち ① 拘束電流 ② 拘束力率 ③ 拘束トルク ④ 最大トルク ⑤ すべり ➅ 全負荷力率 ⑦ 全負荷効率(下図の青枠のデータ)を基に、等価回路定数(下図の赤枠のデータ)を推定することができます。
電動機の定数推定プログラムによるパラメータ推定方法(手順)については、
ETAP-TIP-008J パラメータ推定.pdf をクリックしてご参照下さい。
(2) 電動機トルク特性
等価回路を基に、始動トルク、始動電流、始動力率カーブ(下図の緑枠)のデータが作成されます。電動機トルク特性については、質問番号2020-0084 の第3項「電動機および負荷のトルク特性」を参考にして下さい。
(3) 負荷トルク特性
etap には、ライブラリに下図のような負荷トルクモデルが登録されています。メーカーから負荷トルク特性データが入手できない場合、これらのモデルを用いて解析を進めることができます。しかし、電動機始動解析の対象となる電動機については、出来るだけメーカーからデータを入手するなどして実際のデータを基に解析することが必須です。