電気機器に電源を入れた時に大きな電流が流れ、電気機器や設備にダメージを与える恐れがあります。この突入電流の意味と突入電流が発生する要因について説明して下さい。
ご質問の突入電流の意味と突入電流が発生する要因について説明します。
A. 突入電流とは?
電動機を始動した時や、変圧器、コンデンサ、白熱電球などの電気機器に電源を入れた時に、初期段階で瞬時に定常電流値を超える大きな電流が流れ、徐々に低下して安定した定常電流値に達します。この定常電流値に至るまでの大きな電流を突入電流(Inrush Current)と呼んでいます。
図1は、800kW, 2Pole 誘導電動機(Pump)のコンタクタが瞬時電圧低下(残留電圧20%・事故継続時間0.2秒の瞬低)により離落し、電圧回復後に再投入した場合の再始動電流(実効値)を etap(電力系統解析ソフトウェア)で計算した例です。
図2は、Inrush-Limiter T1 興電舎製品カタログ [5] より抜粋した、残留磁束位相角に対して遮断器投入位相角タイミングが逆相(ほぼ180度の位相差)で遮断器を投入した場合の励磁突入電流(瞬時値)の例です。
B. 突入電流が発生する要因
突入電流が発生する要因を整理すると下記のとおりです。
- 電動機や変圧器などの巻線を持った機器において、例えば電動機・ソレノイドなどのように電源投入時からインダクタンスが定常状態に至るまでの間に生ずる場合と、変圧器などのように鉄心等の残留磁気と交流電源の投入位相に起因する磁気飽和により生ずる場合があります。
- 電動機用の電磁接触器などが瞬時電圧低下後に再投入した場合、電動機巻線内の残留電圧と交流電源電圧の位相差により、瞬時に大きな突入電流 (Inrush Current) が流れ、その後始動電流 (Starting Current) に至り、負荷に応じた安定した定常電流値に達します。 (瞬時電圧低下については、対策等を含め、瞬低関連の Q&A No. 2021-0092, 0097~0100などをご参照下さい。)
- 大容量の平滑コンデンサやデカップリングコンデンサを持つ機器では、電源投入時にまずそれらのコンデンサを充電する必要があるため、電源投入時には大電流が流れます。
- 白熱電灯などは、電源投入直後はフィラメント (filament) などはその抵抗が小さく大電流が流れ、発熱して温まると抵抗が大きくなり定常電流になる。
なお、雷など外的な要因によって発生する電気回路への大電流の流入は、サージ電流 (surge current) として区別しています。雷サージについては、対策等を含め、Q&A No. 2021-0133 など雷保護関連の Q&A をご参照下さい。
突入電流については、下記のようなサイトもご参考にして下さい。
(参考資料)
[1] Wikipedia、突入電流
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AA%81%E5%85%A5%E9%9B%BB%E6%B5%81
[2] 村田製作所、突入電流って何?
https://article.murata.com/ja-jp/article/what-is-inrush-current
[3] 電気設備の知識と技術、突入電流
https://electric-facilities.jp/denki7/to/011.html
[4] 変圧器励磁突入電流(インラッシュ電流)によるトラブルとその対応、公益社団法人 日本電気技術者協会
https://jeea.or.jp/course/contents/07304/
[5] Inrush-Limiter T1 興電舎製品カタログ
http://inrush-limiter.jp/wp-content/themes/inrush-limiter/images/download/PA003-1905.pdf
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田)