電気やガスなどのエネルギーの使用状況を,ICT(情報通信技術)を用いて適切に把握・管理し,省エネルギーを実現するためのエネルギー管理システム(Energy Management System)の現状と今後の技術動向について教えて下さい。また,エネルギー管理システムに関する略語 (EMS, EnMS, xEMS, BEMS, HEMS, MEMS, FEMS) についても説明して下さい。
エネルギーマネジメントシステム (Energy Management System:EMS) とは、家庭、ビル、工場や地域などの施設、さらに電力系統システムを含めた、エネルギー使用状況を把握した上で、「最適なエネルギー利用」を実現するための活動を指しています。 そのような活動を支援するためのシステムが、エネルギーマネジメントシステム(EMS)です。EMSによって「エネルギー使用状況の見える化」 や管理、分析、制御といった全般的なエネルギーマネジメントが可能になります。
ここでは、その概要について説明します。管理する対象の施設によって、EMSの種類は様々ですので、詳細は、質問番号2022-0185「スマートグリッド(マイクログリッド)技術」、および参考文献 [1] [2] [3] をご参考にして下さい。
1. エネルギー管理システムの現状と今後の技術動向
エネルギーマネジメントシステム (Energy Management System:EMS) は,対象とする範囲によりいくつかの種類があり,系統運用者向 EMS や, 需要家向 EMS などがあります。このうち,需要家向EMS は,センサや情報通信技術により,電力使用量の見える化や再生可能エネルギーや蓄電池等の機器の制御を行い,効率的なエネルギーの管理・制御を行うためのシステムのことをいいます。
2. 需要家向 EMS の連携
需 EMS には,対象によって HEMS(家庭のエネルギー管理システム),BEMS(建築物のエネルギー管理システム),FEMS(工場のエネルギー管理システム)があり,地域単位では,CEMS(地域のエネルギー管理システム)や,もう少し広い範囲でマイクロ EMS と称されることがあります。
HEMS は,家庭に設置された太陽光発電や蓄電池などの創エネルギー機器,蓄エネルギー機器や,家電機器などの監視や制御を行うもので,家庭内のエネルギー使用量の見える化や家庭内の機器の省エネルギーを行います。将来には,電気自動車に搭載の蓄電池と連系して,細かな電力管理を行うことも考えられています。また,CEMS との通信により,地域でのエネルギーマネジメントに向けて,家庭内の機器を制御することもあります。これにより,地域内にある太陽光発電など再生可能エネルギーの供給と,地域内の電力需要の管理・制御を行うことで,スマートグリッドの要として地域全体のエネルギー管理を行って,効率的な運用と全体的な需給調整が可能になると考えられています。
3. 需要家向EMS と系統向EMSとの連携
さらに、需要家向 EMS と機器の間の通信や,系統向 EMS と需要家向 EMS との間の効率的な通信を行うため,標準仕様の策定が進められています。
(参考文献)
[1] 環境用語集:「エネルギー管理システム」,EICネット https://www.eic.or.jp
[2] 合田,諸住 監修:「スマートグリッド教科書」,インプレスジャパン
[3] 電力50編集委員会 監修,オーム社編:「電力・エネルギー産業を変革する50の技術」
(名古屋工業大学 准教授 青木 睦 記)