鉛蓄電池の内部抵抗測定に関して測定器により違いが出てしまいます。
メーカーに確認しているのですが測定原理によって値に違いが出ると回答がありました。
1つの測定器は交流放電法、もう一つは直流放電法です。
両者の測定原理と測定結果の違いについて教えて頂ければ助かります。
「鉛蓄電池の内部抵抗測定に関して測定器により違いが出てしまう」とのことですが、鉛蓄電池の内部抵抗は電池の充電状態や温度によっても大きく変化するため、いくつかの測定器で測定する場合、それぞれ測定条件を揃えて測定して比較することが重要です。 この点について、メーカーの方はどのように説明されているのでしょうか?
内部抵抗から電池の劣化状態を推測するには、一定の条件下での内部抵抗と容量の関係(経緯)を把握しておくことが必要です。鉛蓄電池の充放電繰り返し回数と、内部抵抗および放電容量との関係については、文献 [1] をご参照下さい。
文献 [1] には、① 鉛蓄電池の内部抵抗(Page 13)、② 鉛蓄電池の内部抵抗測定方法(JISC8704-1)(Page 15)、③ 鉛蓄電池の内部抵抗測定(インピーダンス法)(Page 17)、④ 鉛蓄電池の内部抵抗測定(コンダクタンス法)(Page 18)について、分かりやすく説明されてますのでご参考にして下さい。 測定原理および測定結果の違いについては、③ および ④ をご参照下さい。
また、内部抵抗を正確に測定するための注意事項については、文献 [2] を、蓄電池劣化診断サービスについては、文献 [3] をご参考にして下さい。
お願い:
ご質問の中の「交流放電法」および「直流放電法」について、上記の測定方法 ③ および ④ との関連性が分かりません。 どなたか、補足説明をお願いします。
参考文献:
[1] 鉛蓄電池ハンドブック~鉛蓄電池の正確な測定のために : 日置電機株式会社HIOKI E.E. Corporation
https://www.hioki.co.jp/file/cmw/userguides/4871/pdf/?action=browser&log=0&lang=jp
[2] 制御弁式鉛蓄電池の内部抵抗を正確に測って頂くために : 一般社団法人 電池工業会
http://www.denchi.info/publication/IPS_TS-006.pdf
[3] 蓄電池劣化診断サービスのご紹介(技術資料) : エヌ・イー・ティ株式会社
http://solar-battery.net/pdf/diagnose_tec.pdf
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ 亀田和之)
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以下、蓄電池メーカーの方からの追加回答です。
蓄電池の内部抵抗の測定方法や測定値の是非については、これまでも多くの顧客よりご質問があります。 その都度、回答はしていますが、元々内部抵抗を簡易なテスターで測定することは少し無理があると思います。
内部抵抗 (上昇すると劣化方向) は、蓄電池を無接続の状態で、ある程度大きな電流で放電させなければ精度は上がりません。 ただ、設置して運転後に、そのようなことは現実味がない為 (蓄電池を無接続の状態で内部抵抗測定することは実質上困難なため)、簡便な方法として、テスターなどを用いています。 また、扱う抵抗値はmΩ単位ということで、更に測定条件を各電池毎に揃えることに神経を使います。
以上の事を前提として、ご質問の内容に移ります。
Q:「交流放電法と、直流放電法で測定値が異なる」 について
- 交流放電法? は、初めて効きますが、インピーダンス法 であろうと思います。 インピーダンス法と、直流放電法 は、蓄電池に流す電流が交流か、直流と言う事で異なります。
- インピーダンス法 は、蓄電池に交流電流を、外部の交流電源から印加して流します。 蓄電池の充放電に反応しない周波数の早い交流(正・負)を流すことで、電池の充電抵抗分と放電抵抗分を同時に測定した結果となります。
- 直流電流法 は、自身の電池の放電電流(ごく僅か)にて測定します、これは放電抵抗分を測定した結果となります。
- 充電抵抗分と放電抵抗分を合せた場合と、放電抵抗分のみでは僅かと思いますが、差が出るのと思われます。 ただ、その差よりも流す電流値に影響される差の方が大きいのでは思います。 (冒頭に記載した通り、精度を上げるには相当な電流を流す必要あり)
- 両者測定器のメンテ時のメリット、デメリットは日置電機さんの説明通りと思います。
補足:
- 電池の内部抵抗は、電池新品、充電開始より半年程度で落ち着いてきます。 同容量の電池は全て同じ抵抗値と言うことではなくバラツキがあります。
- 内部抵抗値の絶対値で、内部劣化を想定するのではなく、初期値からどれだけ増加したかを見てゆくことが大切です。 初期値を1として、何倍になったら劣化方向と言う具合に、傾向として、寿命末期は増加スピードが上がってきます。
(蓄電池メーカーの方からの回答です)