電気室から離れた所にある「機械器具の鉄台および外箱の接地」について、電気室付近の接地極(接地ループ)から接地幹線を延長して接地することが多々あります。 会社によっては設計基準として、接地極からの延長が数十~数百メートルとなる場合は、ケーブル経路の途中に接地極を追加するよう記述されていることがあります。 この目的(接地線と大地の電位をそろえるため?)と適切な距離設定方法についてご教示ください。
「機械器具の鉄台および外箱の接地」 についてのご質問ですので、A種、C種およびD種接地工事に関するご質問と捉えてご説明します。 ここで、
- A種 (高圧用の電気機械器具の金属製外箱、避雷器などに施す接地工事:10Ω以下)
- C種 (300Vを超える低圧電気機械器具の金属製外箱や金属管などに施す接地工事:10Ω以下)
- D種 (300V以下の低圧電気機械器具や金属製外箱および金属管などに施す接地工事:100Ω以下)
ご質問の主旨は、会社によっては、「接地極の数は、原則として半径25ⅿ以内に1ヵ所とする」、「接地極の数は、60ⅿ間隔に1ヵ所の割合で極を設けること」、「接地極の接続は、接地母線がどの位置で切断されても、少なくとも最低1ヵ所の接地極に接続されていること」 などと規定されていますが、その目的と適切な距離設定方法について知りたいということだと思います。
「機械器具の鉄台および外箱の接地」 について検討する場合に考慮すべき点を整理すると下記のとおりです。
- 地絡事故が生じた場合の地絡電流によって、接地電位が上昇するのを抑える。 接地電位 (Grounding Potential Rise) 、接触電圧 (Touch Potential) および歩幅電圧 (Step Potential) については、「質問番号 2022-0170」[2] の第2項をご参照下さい。
- 接地線のサイズは、地絡電流値と保護装置の動作時間との関係から接地線が溶断しない(許容温度に達しない)サイズを選定する。 接地線のサイズについては、「質問番号 2022-0169」[1] をご参照下さい。
- 接地線が機械的ダメージを受けて断線することが無いようにする。 接地線を機械的に保護することと共に、接地幹線がどの位置で切断されても、少なくとも1ヵ所の接地極に接続されているようにすることも重要です。
関連する「質問番号」:
[1] 質問番号 2022-0169 (現場とトラブル) 低圧系統の短絡事故電流を安全に流すための接地線の太さおよびMCCBの選定
[2] 質問番号 2022-0170 (現場とトラブル) 66kV変圧器金属製外箱のA種接地工事の接地抵抗
[3] 「Q&Aゾーン」 の頁から 「接地」 で検索してみて下さい。 約20項目の 「接地」 に関するQ&Aを見ることが出来ます。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)
補足説明:
上記の回答に関する「産業用電気設備関連」の会社の方々からの補足説明は下記のとおりです。 ご参考にして下さい。
- 上記の3はあまり実施されていないと思います。 弊社も実施しておりません。
- 電技解釈は、接地線の太さの選定について、「接地線1.6㎜以上、2.6㎜以上、4㎜以上・・・」and「故障が起きた時に安全に通じることが出来ること」とありまます。 また、接地抵抗は10Ω以下と記載されていることから接地抵抗が10Ω以下、接地線サイズは4㎜以上であれば良いと考えて施工しているケースがあるので注意が必要です。 接地抵抗、接地線太さの選定に当たっては地絡事故が起きた時の地絡電流の大きさ、異相地絡(二相短絡)が起きた時の電流の大きさを算出して上記の 事務局の回答1,2,3 による設計が必要です。
- 電気室から接地線を延長する場合には工事用の溶接機、高圧ケーブル地絡事故等による迷走電流や断路器等の開閉サージによるトラブル波及事故も起こり易くなります。 安全に事故電流を流すことを考えることと、迷走電流、開閉サージによるトラブルを起こさないようにすることを考えると接地ケーブル経路の途中に接地極を追加するニーズは理解できます。
追加説明: (別の方からの説明です)
電動機等の動力線は基本的にはケーブルラックに敷設していますので、ラックに接地幹線を併設し、そこから機器の接地を取っています。 電気室から離れたところの機器については、別の接地極を埋設していますが、何m離れたら接地極を打つ等の基準はありません。