変圧器励磁突入電流抑制装置 Inrush-Limiter T1 は、工場や電力会社など様々な分野で導入されており、位相角制御方式を採用することにより励磁突入電流と電圧低下の抑制を実現しています。 質疑応答 2023-0266 変圧器励磁突入電流抑制装置 Inrush-Limiter の納入実績 で紹介したように、本装置は、2023年9月現在で、201台の納入実績があります。 これらの装置は全て、以下の導入事例で実施しているように現地での装置の動作を確認する竣工試験を行い、電圧低下および励磁突入電流の抑制結果を確認して納品しています。
ここでは、以下の4分野における導入成果事例を示します。 いずれのケースも本装置の使用により、変圧器一次側母線の電圧低下および遮断器投入時の励磁突入電流共、大幅に抑制されることが実証されました。
- 工場 (電力需要家) の特高受変電設備
- 風力発電所
- 電力会社変電所
- 鉄道会社変電所
1.工場(電力需要家)の特高受変電設備
大手硝子メーカーの受変電設備において数ある受変電用変圧器のうち、当該変圧器を課電した際に一次側系統に繋がる他のバンクに著しい電圧低下が現れ、生産活動に障害が及んでいたことから本装置が導入されました。 図1(a) に変圧器周辺の系統図を示します。 当該変圧器は赤枠で囲った箇所となります。 本系統にて本装置を使用して8回、未使用にて4回遮断器開閉試験を行ったところ、図1(b) に示すグラフが得られました。 図より、位相角差と励磁突入電流・電圧低下は比例関係にあり、本装置を使用し位相角差が小さくなるように制御することで、下記のように励磁突入電流と電圧低下が大幅に抑制されることが実証されました。 最大励磁突入電流及び最大電圧低下の抑制効果を以下に示します。
- 電圧低下 : 不使用時 23% => 使用時 3%(1/5以下に抑制)
- 励磁突入電流 : 不使用時 13,250A => 使用時 3,725A(1/3以下に抑制)
補足説明: 図1(b)~図4(b) のグラフは、横軸が残留磁束位相角 (θop1) と初期励磁磁束位相角 (θcl) の差(位相角差)、縦軸が励磁突入電流および電圧低下を示しています。
2.風力発電所
本風力発電所は、連系変電所において変圧器併入操作時の電圧低下が 20% 程度となることが解析で明らかになり、これを 5% 以下に抑制する必要があり本装置が導入されました。 図2(a) に本装置を導入した風力発電所における変圧器周辺の系統図を示します。 本系統にて本装置を使用して7回、未使用にて4回遮断器開閉試験を行ったところ、図2(b) に示すグラフが得られ、最大励磁突入電流及び最大電圧低下の抑制効果は以下の値となりました。
- 電圧低下 : 不使用時 4% => 使用時 3.2% (1/5以下に抑制)
- 励磁突入電流 : 不使用時 876A => 使用時 271A (1/3以下に抑制)
3.電力会社変電所
離島にある電力会社の変電所において、系統の電源が小さいことから受変電用変圧器の励磁突入電流による電圧低下が予見され、本装置が導入されました。 図3(a) に本装置を導入した電力会社変電所における変圧器周辺の系統図を示します。 当該変圧器は赤枠で囲った箇所となります。 本系統にて本装置を使用して3回、未使用にて2回遮断器開閉試験を行ったところ、図3(b) に示すグラフが得られ、最大励磁突入電流及び最大電圧低下の抑制効果は以下の値となりました。
- 電圧低下 : 不使用時 4% => 使用時 5.5% (1/2以下に抑制)
- 励磁突入電流 : 不使用時 302A => 使用時 24A (1/12以下に抑
4.鉄道会社変電所
某鉄道会社の変電所において、変圧器の投入操作時に励磁突入電流現象によって著しい電圧低下が生じること、特に構内に設置されているパワエレ式の無効電力調整器 (SVG [Static Var Generator], STATCOM) がしばしば脱落停止することなどが障害となっていたため、本装置が導入されました。 図4(a) に本装置を導入した鉄道会社発電所における変圧器周辺の系統図を示します。 本系統にて本装置を使用して4回、未使用にて5回遮断器開閉試験を行ったところ、図4(b) に示すグラフが得られ、最大励磁突入電流及び最大電圧低下は以下の値となりました。
- 電圧低下 : 不使用時 7% => 使用時 1.9% (1/3以下に抑制)
- 励磁突入電流 : 不使用時 1,695A => 使用時 788A (1/2以下に抑制)
(株式会社興電舎の方からの回答です)