ケーブルの増設に伴いケーブルの敷設状況が変わり、ケーブルの許容電流が低下したことによりケーブルが損傷したという事例がありましたら紹介して下さい。 このようなケーブルの損傷を防止するために、設計時および保守点検時に考慮すべき事項についても教えて下さい。
ある工場でのトラブルの事例、および設計時および保守点検時に考慮すべき事項について紹介します。
1. 事故の概要
この例はある工場でのケーブル事故の例です。 この事故は、ケーブルピット内に多数の 3kV 高圧ケーブルが敷設されている状況で発生しました(写真① 参照)。 図-1 は、ケーブルピット内の断面図を示しています。 ケーブルの許容電流は、ケーブルの敷設状況に応じて電流低減率を乗じた値となります。 電線便覧などには、電流低減率についての解説がありますので、図-2 を参照して下さい。 今回の事故が発生したケーブル敷設状況から推定すると、電流低減率は 0.3 以下とされます。 事故に至った要因は以下の通りです。
まず、当初(ピット最下部)に敷設されたケーブルは、低減率 0.7 で設計されていました。 しかし、その後上部に多数のケーブルが敷設されたため、電流低減率が 0.3 以下となり、敷設ケーブルの許容電流を超える電流が流れ続けケーブルに損傷を与えました。 さらに、ケーブルピット近辺で重機や火気を使用する工事が行われ、ケーブルピット蓋の上部には鉄板養生や防炎シートが養生されており、ケーブルピット内の放熱が抑制された時期がありました。 写真① において、ケーブルの変色が確認できます。 その部分の最も損傷の大きなケーブルは 写真② を参照して下さい。 同一ケーブルピット内でも、放熱が抑制されていない部分では、写真③ のように損傷は発生していません。
2. ケーブルの敷設設計や保守に考慮すべき事項
このようなケーブルの損傷を防止するために、設計時および保守点検時に考慮すべき事項をまとめると下記のとおりです。
- 将来的な増設ケーブルを含めて、電流低減率を検討する必要があります。
- 電流低減率に応じた敷設方法を選択することも重要です。写真④ に示されているような、ケーブルクリートを使用した敷設方法が一例です。
- 定期的にケーブルの敷設状況を管理することも必要です。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)