下図のような系統において電力会社側で、風の影響で木の枝が一時的に配電線に接触するという地絡事故が起こり、電力会社側の DGR (67G) が動作して電力会社側の遮断器がトリップしました。 この時、需要家側のVCBキュービクルの DGR (67G) が不要動作し、この盤のVCBがトリップしました。 この DGR (67G) の動作タイミング(停電の時か、復電の時か)は分かりませんが、不要動作の原因としてどのようなことが考えられるでしょうか?
系統図の VCB キュービクルの DGR (67G) が不要動作した状況から見て、いくつかの知っておきたいことがありますので纏めて見ました。
DGR (67G) 不要動作の原因
〔電力会社側で地絡事故が起こり、電力会社側の DGR (67G) が動作して送電側の遮断器がトリップした〕ということから、電力会社側の DGR (67G) の動作は正常と言えます。 PASの方向性SOG および主電気室の DGR (67G) は動作しておらず、これらも正常と言えます。
にも拘らず、需要家側の VCB キュービクルの DGR (67G) が動作したということは、このDGR (67G) は下流の地絡事故を検出するためのものであり、DGR (67G) の不要動作と言えます。 不要動作の原因として考えられるのは〔CTの極性 (方向性) および結線の誤り〕です。 先ず結線のチェックをして下さい。 今後の調査などにより不要動作の原因が判明しましたら、ぜひこの Q&A のコーナーにご投稿(報告)して下さい。
この系統内のケーブルが長い場合、ケーブルのキャパシタンスによる影響も考えられますが、電力会社系統内の 6.6kVケーブルおよび需要家系統内の 6.6kVケーブルの総長は1,000m以下とのことなので、この影響は無いと言えます。 また、系統図から判断して、PAS(方向性SOG付)でこの PAS の下流の地絡事故を保護できるので、VCB キュービクルの DGR (67G) は無くても大丈夫です。 よって、原因が判明するまでの間、この DGR (67G) を一旦ロックしておくことも一案かと思います。
配電自動化システムによる自動復旧
このトラブル事例のように、電力会社側で〔風の影響で木の枝が、一時的に配電線に接触する〕といういうような事故があった場合の〔復旧のしくみ・復旧の流れ〕について、下記のWeb Site に分かり易い説明がありますのでご参考にして下さい。
https://www.kansai-td.co.jp/teiden-info/recovery-flow.html : 配電自動化システムによる自動復旧(関西電力送配電)
関連する質疑応答 (Q&A)
今回のトラブル事例に関連する〔非接地系統の地絡保護〕に関し、これまでに下記の Q&A がアップロードされています。 また〔接地〕および〔地絡〕で検索すると、50項目の Q&A を見ることが出来ます。 併せてご参照下さい。
- 2023-0221 非接地系統のEVT接地方式による保護
- 2023-0235 多重接地による地絡保護継電器の不要動作
- 2023-0236 EVT接地がある系統での地絡方向継電器の不要動作
- 2023-0237 1線地絡事故時の零相電流の流れ(向き)と位相角
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)