回転機のねじり共振について、ねじり共振、トルク変動、ねじり固有振動数などの用語の意味、ねじり共振を回避する方法、ねじり共振が発生した場合の対処法等について教えて下さい。
電動機やガスタービン発電機などの回転機において〔ねじり振動〕が原因となる軸の破損や騒音などいろいろな問題が起こります。 ここではこれらの用語の意味や〔ねじり共振〕に対する対処法などについて、ご質問の項目に沿って説明します。
1. 回転機のねじり共振
回転機の〔ねじり共振〕とは、回転機械の軸やその他の回転部分が、外部からのトルクの影響で〔ねじれ振動〕を起こし、その振動の周波数がシステムの固有振動数と一致することで増幅される現象です。 この共振現象は、機械の性能に悪影響を及ぼし、損傷を引き起こす可能性があります。
具体的には、回転機械の軸が運転中に周期的なトルク変動を受けると、軸がねじれる形で振動します。 このねじれ振動が固有振動数に近い周波数で発生すると、振動が共振し大きくなることがあります。 共振が発生すると、軸の疲労や破損、機械の性能低下などの問題を引き起こす可能性があります。
2. 回転機のトルク変動
回転機における〔トルク変動〕とは、運転中の電動機やその他の回転機械のトルクが一定でなく変化する現象のことです。 このトルクの変動は、電源電圧の変化、機械的な負荷の変動、制御系の不具合などによって起こります。
例えば、誘導電動機ではすべりによってトルクが変化します(これをトルク特性と言います)。 すべりとは、回転磁界と回転子の間の速度差のことで、この速度差が大きいほどトルクは大きくなります。 また、インバータを使用して回転数を調整する場合、電源電圧の変化によってもトルクが変動します。 電源電圧が低下すると、電動機の発生トルクは電源電圧の2乗に比例して減少します。 トルク変動は、回転機械の振動や騒音の原因となることがあり、特にトルク変動が機械の固有振動数に近い場合、共振を引き起こして過大な振動が発生する可能性があります。
3. ねじり固有振動数
〔ねじり固有振動数〕とは、回転体や構造物がねじれ振動を行う際に、そのシステムが自然に振動する特有の周波数です。 この値は、システムのねじり剛性と慣性モーメントに依存し、外部からのトルク変動がこの周波数に近いと共振現象が生じる可能性があります。
〔ねじり固有振動数〕の計算式は、次式で表されます。 ここで、fn : ねじり固有振動数(Hz)、kt : ねじりばね定数(N・m/rad)、I : 慣性モーメント(kg・m2)です。 この計算式により、システムがどの周波数で共振するかを予測し、それを避けるための設計を行うことが必要です。 4. ねじり共振を回避する方法
ねじり共振を回避する方法として、① 加振源の変更(加振源の周波数を変更して、システムの固有振動数から離す)② 質量や剛性の調整(システムの質量を増減させたり、ばね定数を調整して固有振動数を変更し、加振周波数から離す)③ ダンパーの使用(適切な減衰装置〔ダンパー〕を設置して、共振時の振動を抑制する)④ 固定方法の強化(構造の固定方法を強固にすることで、固有振動数を上げる)⑤ 材料の選定(ヤング率が高い材料を使用することで、システムの剛性を上げる)などがあり、これらの方法を適切に組み合わせることで、ねじり共振を効果的に回避することができます。 また、設計段階での振動解析や、既存のシステムに対する振動測定を行い、問題が発生する前に対策を講じることが重要です。 システムの運用中にも定期的なモニタリングを行い、共振の兆候を早期に捉えることも必要です。
5. ねじり共振が発生した場合の対処法
ねじり共振が発生した場合の対処法には、① ねじり振動計測(ねじり振動を計測して、共振が発生している周波数を特定し、どの部分が共振を起こしているかを把握する)② シミュレーション(ねじり振動シミュレーションを行い、共振を引き起こしている要因を特定し、それに基づいて対策を立てる)③ 固定方法の見直し(構造の固定方法を強化することで、固有振動数を変更し、共振を避ける)④ 質量とばね定数の制御(質量やばね定数を調整することで、共振を抑制する)などの方法があります。 これらの対処法を適用する際には、専門家による〔計測やシミュレーションなどの手法を用いて、正確なデータに基づいた詳細な解析〕を行い、対処法を適用する前に問題の原因となっている共振の特定が不可欠です。また、共振の影響を受けやすい部品や構造については、定期的なメンテナンスと監視が重要です。
6. 重慣性負荷を持つシステムが、ねじり共振が発生しやすい
重慣性負荷を持つシステムがねじり共振が発生しやすい理由は、そのシステムのねじり固有振動数が比較的低く、通常の運転範囲内で加振周波数と一致しやすいためです。 特に、ブロワーや圧縮機などの重慣性系負荷の場合、軸系のねじり固有振動数が約20~30Hz以下であり、始動中の通過領域やインバータ駆動時の運転範囲内にあることが多いため注意が必要です。
7. ガスタービンのシェアピン保護
ガスタービンのシェアピン保護の主な目的は、過負荷や異常なトルクが発生した際にガスタービン本体の故障を防ぐことです。 シェアピンは、ガスタービンと発電機の間に設置され、通常の運転条件下では固定されていますが、例えば落雷などの事故時に商用電力の瞬時電圧低下が発生し、系統と連系運転している自家発電装置に過大な軸ねじれトルクが発生した場合など、シェアピンが破断してガスタービンを保護します。 シェアピン方式は確実にガスタービンを保護できるものの、作動毎に破断するため、シェアピン交換作業が必要となります。 そのため、シェアピンの設計は、破断特性やメンテナンス性を考慮して行います。
電動機のねじり共振によるトラブル事例と再発防止策については、質疑応答 2024-0292〔電動機選定におけるねじり共振検討〕をご参照下さい。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)