電力設備の最新デジタル技術における IED (Intelligent Electronic Device)、MU (Merging Unit) とはどのような装置でしょうか? また、どのような目的で使用されるのでしょうか?
IED (Intelligent Electronic Device) は多機能型保護リレー、MU (Merging Unit) は計測データを収集し、標準化された通信プロトコルに変換する装置のことです。、質疑応答2024-0342〔電力設備の通信規格 IEC 61850〕で説明した電力システムの高機能デジタル化に関する通信ネットワークとシステムを構成するために必要な装置です。
IED は保護継電器機能、イベントレコーダ、オシロ機能(msec オーダーの事故波形記録)、データロガー、フォルトロケータ(電線路の事故点評定)を具備した多機能デジタルリレーです。 IED は送電線保護、母線保護、変圧器保護、発電機保護、フィーダ保護等の用途別に対応した保護を可能にします。
MU は、具体的には PT(電力計測用変成器)、CT(変流器)等のアナログ信号と遮断器開閉操作表示(接点信号io)を光信号に変換する装置のことです。 これにより、光ケーブル配線が可能となりメタルケーブル配線の欠点である CT 負担、電磁干渉やノイズの影響を受けにくくなり信号の品質を保つことができます。 また、光ケーブル配線はメタルケーブル敷設よりも工事ボリュームが削減でき(約80%削減)、施工~試験調整迄の時間短縮、費用削減が可能になります。
さらに、MU は PT、CT 等のアナログ信号に GPS 時刻による TS(タイムスタンプ)を押して IED 相互と通信することができます。 このように MU、IED を使い電力監視制御とデータ収集システム SACADA(Supervisory Control And Data Acquisition System)を IEC 61850 規格による通信ネットワークで接続することで、系統全体にある IED について同一時刻におけるイベントレコーダ、事故波形解析(電圧電流波形比較)が可能になります。 系統の地絡短絡事故やトラブル発生時には保護継電器(主保護・後備保護等)の誤動作防止、事故部位の特定が容易になり、運転員による迅速な復旧が可能になり、電力の安定供給と信頼性が向上します。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)