アークフラッシュとは、気中で短絡事故などが生じた場合に、導体間に大電流が連続的に流れることにより生じる「まぶしい閃光と強烈な熱」のことです。このアークフラッシュ事故が生じると、電気設備の損傷だけでなく、① 感電 ② 爆発 ③ 破片の飛散 ④ 人間を吹き飛ばす爆風 ⑤ 聴覚にダメージを与える音波 ➅ 失明の危険のある閃光 ⑦発 火源となるプラズマおよび熱などにより、生死にかかわるようような重大な「労働災害」が生じます。米国では、これらの労働災害から労働者を保護するために、OSHA(米国労働安全衛生局)やNEC(全米電気設備基準)等の基準により、この規定を遵守しない場合、事業者に刑事罰や高額な罰金が課せられます。OSHA は日本の「労働安全衛生法」、NECは「電気設備技術基準」に相当する基準と言えますが、これらの日本の基準には、このアークフラッシュ事故による労働災害から労働者を保護するための規定は、まだ取り入れられていません。
(OTI社の etap カタログより抜粋)
日本では、「電気設備の保守管理がしっかりしているから必要ない」とか「運転管理する人がしっかりしているから大丈夫」という声を聞きますが、最近では、設備が古くなった工場が増えているてきている、熟練の運転員が少なくなってきていることもあり心配です。最近のCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)と同様、「経済性」だけでなく、「人のいのち」を優先した対応策が必要ではないでしょうか? とは言いながら、国内でもアークフラッシュ対策を実施する工場が徐々に増えて来ています。しかし、それは主に外資系の企業が中心です。本国の親会社の規定により、親会社からの指示により実施し始めているというのが実情のようです。 なお、アークフラッシュに関する法令および規格、計算手法等については、別の質問番号でのご質問に対してお答えします。併せてご参照下さい。
- アークフラッシュ計算手法、規格、および便利なツール
- アークフラッシュ計算結果の評価方法と対応策
- アークフラッシュ用の防護服の購入方法
この回答でご不明の点がありましたら、追加質問等をお待ちしています。