JIS Z 9290-3:2014 では建築物等,ならびにその内部または上部の人間,設備および内容物に対する効果的な雷保護システムの設計,施工,検査および保守に関する基本事項を規定している。雷保護システムは,LPS(Lightning Protection System)と呼ばれ,外部雷保護システム(外部LPS),内部雷保護システム(内部LPS)で構成される。
この規格は,雷による物的損傷または人命保護のために規定された規格で,内部の電気・電子設備の保護については規定されたものではないことに留意する必要がある。
1. 外部雷保護システム(外部LPS)
外部LPSは,雷を確実に捕捉し,雷電流を安全迅速に大地に放流するためのシステムである。旧JIS(JIS A 4201:1992)で規定されていた避雷針等の避雷設備に相当するが,最新の避雷理論を盛り込んだ内容となっている。現在では,避雷針の用語は無くなって受雷部システムと呼ばれ,外部LPSの構成要素は受雷部システム,引下げ導線システムおよび接地システムとなっている。
2. 内部雷保護システム(内部LPS)
雷電流が外部LPSを通過している時に,外部LPSと建物内部の金属部分間に発生する過電圧によって火花放電が発生し,火災や爆発などを誘起する可能性がある。内部LPSは,このような危険な状態を防止するためのシステムである。その方法は,建築物内部のすべての金属製部分間を相互に導体により接続し,等電位ボンディングを行うことである。等電位ボンディングは,建築物内の他の金属部分間を直接接続するが,電源線や通信線などは直接接続できないため SPD を介して接続する。
詳細は「SPD・避雷器と耐雷トランスを用いた雷保護」オーム社(2015−6)に記載されているのでご参照下さい。
(中部大学 教授 山本和男 記)