ここでは、LIT の設置場所、LIT の施工方法、LIT の適用事例について説明する。
1. LIT の設置場所
LIT の設置場所としては,電源用 LIT は一般的には分電盤から被保護機器までの間でスペースの許される場所が設置場所になる。製品によっては19インチのものがあり,ラックの底部などに設置される。一方,通信用の LIT は小型のものが多く公衆回線用のものや LAN 用のものは設置場所を選ばない特徴があるため,使用用途や,特徴にあったものを選定する。
2. LIT の施工方法
電源用 LIT の施工は,通常,設備の停止を伴う。電源回路に接続する前に,一般的に絶縁抵抗計により施工前の LIT の絶縁状態を確認する。また,電運回路への施工後,負荷取付け前の出力電圧を確認しておくことも重要である。その後,負荷を配線して動作確認が行われる。通信用の LIT は,通信の停止状態で被保護機器側に接続しその後,通信テストを行うのが一般的である。
3. LIT の適応事例
次に LIT の適応事例について紹介する。被保護機器内部に避雷素子(チップ形 MOV 等の電流耐量の大きくないもの)が実装されており,外付けの SPD との協調が困難である場合,図1 のように、LIT を設置することで被保護機器を防護することができる。図1 の場合,避雷針に雷撃があっても LIT で分電盤と被保護機器間が雷サージに対して絶縁されており被保護機器内部に雷サージが分流することがない。この方法は、電算室やサーバ室等の異常電圧に脆弱な機器の防護にも適している。
図2 は,異なる受電設備を持つ建物間において、メタル線で通信を行っている場合の LIT の適用例である。この例では、高電圧を低電圧に杜上変圧器で変圧した低圧側に SPD を設置し,異常電圧侵入時には,SPD で被保護機器(制御機器やターミナル機器)の電源側の LIT の耐電圧以下に異常電圧を制限している。この例は,柱上変圧器から被保護機器までの配線距離が長いため,被保護機器側にも LIT を設置している。また,通信線に誘導される雷サージに対しては,想定される異常電圧よりも耐圧の高い通信用 LIT と被保護機器の電源側に設置された電源用 LIT にて被保護機器の耐電圧性能を増すことで、被保護機器の通信ポートを防護している。
図3 は,データセンタビルに LIT を適用した例である。図3 の左上の LIT は,落雷時に発生する階差電圧から被保護機器を防護する目的で設置されている。これらの異常電圧は,大手通信事業者,電力会社で長年にわたり計測されている。LIT の耐電圧性能は,これらの計測結果に基づいて仕様化されている。現在は、落雷時に発生する階差電圧等は数値電磁界解析等を用いて計算可能であり,こうした計算結果から必要な耐電圧を求めることもできる。直撃雷を受けるリスクが大きい場合、接地から電源ラインに流出する電流が大きくなるため,図3 の右下の LIT はクラス I SPDとともに使用されることが望ましい。
詳細は「SPD・避雷器と耐雷トランスを用いた雷保護」オーム社(2015−6)に記載されているのでご参照下さい。
(中部大学 教授 山本和男 記)