まず、標準電圧とは何かについて調べてみます。日本では、JEC 0222-2009 「標準規格」 に標準電圧(最大使用電圧)として、公称電圧と最高電圧が規定されています。公称電圧とは、その線路を代表する線間電圧のことで、① 1000V以下の電線路は、100, 200, 100/200, 230, 400, 230/400V、② 1000Vを超える電線路は、3.3, 6.6, 11, 22, 33, 66, 77, 110, 154, 187, 220, 275, 500, 1100kV [1] となっています。国際的には、IEC 60038-2009 “IEC Standard Voltage” に規定されています。 JEC-0222とIEC-60038の整合性およびその変遷については、資料 [1] : 標準電圧[改定]-JEC 0222-2009 をご参照下さい。
ご質問にある標準電圧6.6kVと6kVの関連ですが、元々は6KV程度を供給するにあたり、当時の技術力では損失で電圧降下が生じる。この損失を考慮して10%増しの電圧 (6.6kV) で送電し、これを公称電圧としたことが始まりであると言われています。最高電圧(最大使用電圧)とは、通常の運転状態でその回路に加わる線間電圧の最大値のことであり、JECにより ① 公称電圧が1000V以下の電路は、その電路の公称電圧の1.15 倍、② 公称電圧が1,000Vを超え500kV未満の電路は、その電路の公称電圧の 1.15/1.1倍と定められています。例えば、公称電圧6.6kVの最高電圧は 6.6kV ✕(1.15 ÷ 1.1)= 6.9kV となります。
本題に戻って、高圧モータの標準電圧が6.6kVと6kV の場合の特質(特性)に違いについては、資料 [2] :「電源の電圧変動で機器特性はどう変化するか」 の第2項 「誘導電動機の特性の変化」、および 資料 [3] :「三相かご型誘導電動機の電圧変動、周波数変動の影響」 の第1項 「電圧変動の影響」 をご参照下さい。 概要は下記のとおりです。
① 電圧が低下した場合:電圧が +10%低下の時、始動トルク、最大トルクは-19%(電圧90%の2乗で81%)、始動電流は-10%となる。
② 電圧が上昇した場合:電圧が -10%上昇の時、始動トルク、最大トルクは+21%(電圧110%の2乗で21%)、始動電流は110%となる。励磁電流が増す為、大きなトルクが出る特性になるが、電圧の上昇による無負荷電流無負荷損失が増加し、温度上昇も生じる。
(参考資料)
[1] 標準電圧標準化委員会 兼 IEC TC8 国内委員会 : 標準電圧 [改定] JEC-0222-2009
[2] 社団法人日本電気技術者協会 : 電源の電圧変動で機器特性はどう変化するか https://jeea.or.jp/course/contents/07303/
[3] 住友重機械工業株式会社 : 三相かご型誘導電動機の電圧変動、周波数変動の影響 https://cyclo.shi.co.jp/newsmail/201202.html
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田)