2022-0179 （再エネ）分散型電源の最適利用技術

1.  分散型電源（Distributed Generation）の定義

「分散型電源」とは，需要家エリアに隣接して分散配置される小規模な発電設備全般の総称であり，電力会社による大規模集中型発電設備に対する相対的な概念です [1]。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入が大きく進んでいますが，これらは天候など自然の状況に応じて発電量が左右されるため，家庭用燃料電池などのコージェネレーション，蓄電池，電気自動車，需要制御など，需要家側に導入される分散型のエネルギーリソースと組み合わせた活用も検討されています。

2.  分散型電源設備として電力系統に接続する場合のシステム構成

分散型電源は，入力エネルギーによって以下の通りに分類されます。それぞれの設備で，電力系統に接続する場合のシステム構成は異なりますが，電力系統と連系する際には，「電気設備に関する技術基準を定める省令」や「系統連系規程」などの技術規定に従う必要があり，そのための保護・制御装置を備える必要があります。 化石燃料を利用した設備として，ディーゼルエンジン，ガスエンジン，ガスタービンなどを原動機として，同期発電機によって発電するものがあります。これらの多くは，直接，電力系統と連系します。 再生可能エネルギーを利用した設備として，太陽光発電，風力発電などのほとんどは，インバータ（直流-交流変換装置）などの電力変換装置を介して電力系統と連系します（図1）。事故時の保護機能や系統連系のための制御装置を備えた電力変換装置は，パワーコンディショナ (Power Conditioning System：PCS) とも呼ばれます。燃料電池や蓄電池も同様に，PCS を介して電力系統と連系されます。

3.  最適利用技術

分散型電源は，需要家エリアに隣接して発電することができるため，送電ロスが少なく，大規模な送電設備も不要になります。また，燃料電池やガス発電などのコージェネレーションシステムでは発電時に発生する廃熱を有効利用するため，高い総合エネルギー効率を実現することができます。このため，ビルなどの需要場所ごとに，エネルギーマネジメントシステム (EMS) によって，需要予測などの情報を基に，コストの最小化などを目的とした発電量や蓄電池の充放電量などの制御が行われます。また，災害時には，非常用電源として，負荷への電力供給を行いながら，電圧や周波数が規定値以内になるように各発電設備や蓄電池システムの制御が行われます。さらに，分散型エネルギーが設置された施設内だけでなく，近接地で面的に利用することが考えられています。分散型エネルギーを面的利用によって電気エネルギーや熱エネルギーを需要家間で融通し，効率的なエネルギー利用ができると考えられています [2]。

4.  今後の技術動向

また，系統上に散在する分散型エネルギーリソースを，IoT 技術を用いて遠隔に制御することで発電所のような電力創出と調整機能を提供する仕組みとして，バーチャルパワープラント (Virtual Power Plant：VPP) も注目されています [3]。これにより，以下のような利用が考えられています。

①  分散型電源の大量導入に伴う電圧変動抑制などの電力品質維持 ： P CSによる無効電力制御，蓄電システムの活用など

②  分散型電源の大量導入に伴う電力需給バランスの調整，周波数維持 ： 蓄電システムの活用，需要制御，太陽光発電や風力発電の出力制御など

③  送電用電力容量不足対策 ： 系統混雑時における分散型電源の出力抑制や蓄電システムの活用など

（参考文献）

[1]  日本電機工業会：分散型電源とは

https://www.jema-net.or.jp/Japanese/res/dispersed/010.html#012

[2]  総合エネルギー調査会：長期エネルギー需給見通し松陰会（第6回会合）資料1 ｢分散型エネルギーについて｣

https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/006/pdf/006_05.pdf

[3] スマートコミュニティサミット2019：分散型エネルギーリソースの最適活用に向けた取り組み

https://www.nedo.go.jp/content/100893756.pdf

（名古屋工業大学 准教授  青木 睦 記）