発電機の無負荷時の3相アンバランス電流について教えて下さい。
発電機の定格仕様は75MW、11kV、4374A、力率0.9、2P、ブラシレス励磁方式です。
通常運転では、タービン発電機が無負荷状態で3000rpmに昇速してから同期併入する直前に界磁電流(界磁遮断器 41E)を入れて発電機端子電圧を確立させてから直ぐに系統併入します。 このようなケースでは無負荷時に3相アンバランスが起きていても短時間なので、これまで気が付きませんでした。 発電所の試運転において、系統併入前に3000rpmに昇速してから無負荷励磁特性試験、電圧確立試験等で界磁遮断器 41E を投入してから「徐々に界磁電流を増やして発電機定格電圧まで上げて行く過程」では下記のような現象が起きました。
1. 発電機同期併入前(無負荷状態)に発電機端子電圧を徐々に上げると、3相電流はアンバランスになる。① 無負荷電流 U相:40~170A、V相:10~40A、W相:10~40A(無負荷電流は、磁束をつくる電流、充電電流である)② 相電流について、差分電流で30A(3倍)~130A(13倍)である。
2. 発電機同期併入後は、3相電流はバランスする。 併入直後の負荷電流 U相:300A、V相:300A、W相:300A(タービンからの有効電力(電流)、電機子反作用電流が流れ始めてバランスする)
下記の質問についてご教示下さい。
Q1 : 無負荷状態のときには無負荷電流が安定しない。 このような状況になる理屈をご存知でしょうか? 発電機が系統解列したときの固定子巻線の鉄芯の残留磁気が影響しているでしょうか?
Q2 : 無負荷時には電流アンバランスになるので保護継電器はトリップしないようにするため、どのような対策が必要でしょうか?
(産業用電気設備関係の方からの質問です)
ご質問について下記のように回答しますので、ご参考にして下さい。
A1: 質問者が想定されているように、発電機が系統解列・界磁遮断器 41E を OFF したタイミングと回転子の2極が停止した状態において、固定子巻線の鉄心が偏磁(残留磁気)していることが原因です。 無負荷電流は発電機固定子巻線電流(電機子電流)の定格電流 4,374A に比べて非常に小さい電流領域です。 発電機容量 75MW は鉄心の重量が大きいので偏磁を解消する磁束をつくる界磁電流が大きくなります。
系統併入前の無負荷時において「徐々に界磁電流を増やすこと」をした場合には、発電機定格電圧 11kV になる上昇過程ではU相、V相、W相の電流が偏磁によりアンバランスになると推定されます。 偏磁の大きさによっては系統並列直前の定格電圧11kV(無負荷励磁)に相当する界磁電流を流しても3相無負荷電流がアンバランス状態になるケースもあります。 系統併入して負荷電流(電機子反作用電流)が流れる状態になれば3相電流のアンバランスは解消されます。
A2: 系統併入前までに発電機保護として必要な保護継電器かどうか確認してください。 系統併入前の無負荷状態では必要の無い保護継電器であって3相電流アンバランスで誤動作する保護継電器は系統併入までロックしておく必要があります。 3相電流アンバランスで誤動作しそうな保護継電器は逆相保護ですが回転子逆相耐量電流で設定されているので誤動作しないと思います。 なお、無負荷状態でも必要な継電器は鉄心過励磁(V/F)・過電圧保護、地絡保護、周波数(回転数)保護等が考えられます。 また、PT に接続されている保護継電器は回転数(周波数)が低いと精度が出ないケースもあります。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)