弊社では電動機整備時に、取り外した軸受を ① 手回しして異音確認、② 軸受内グリスの目視確認、③ 水分進入の有無、④ グリス変色・流出などの目視確認などの方法で定性的に劣化評価しています。 御社ではどのような方法で劣化評価しているでしょうか? 検査項目、検査頻度、判定基準について教えて下さい。
また、弊社内では、運転中センシングと実物チェックの両面から軸受劣化評価できると考えています。 整備時に劣化した軸受の現物を見る機会があることから、センシング技術を補完する形で、実物劣化評価を最大限活用したいと考えています。 この点につきましても、御社の知見、具体的な運用方法についてご紹介下さい。
(産業用電気設備関係の方からの質問です)
実際に保守点検の経験がないと判断できない内容ですので、数社のご担当の方に各社の知見および具体的な運用方法についてお聞きしてみました。
電動機軸受(転がり軸受)の劣化評価に関する検査項目、検査頻度、判定基準について :
A社の方からの回答:
電動機に限らず、運転員による巡回点検を直毎おこなっています。 重要機器を対象に、定期に振動測定を実施しています。
- 検査頻度は半年(2回/年)です。
- 判定基準は振動測定器の基準による。 ちなみに、弊社ではMK-210という比較的メジャーな振動測定器を使用しています。
- 振動測定時にはグリスアップも実施します。
- 測定の結果、要注意の機器や不良判定の機器は、振動測定周期の短縮や補修計画(ベアリング交換)をその都度計画します。
絶縁測定は、以下の通りです。
- 低圧電動機は、絶縁抵抗測定のみ行います。
- 高圧電動機は、絶縁診断(残存推定破壊電圧を基に余寿命測定を実施)を実施します。
- 検査頻度は4年です。 ただし、要注意の機器や不良機器は周期短縮や補修計画を策定しています。
B社の方からの回答:
ころがり軸受は低圧、高圧モータの電気的な清掃、巻替え整備に合わせて消耗品として新品に交換しています。 モータ整備の際に取外したころがり軸受の点検、寿命評価はしていません。 ころがり軸受は消耗品であり、急にダメになるので再使用もしていません。
事務局より :
ご参考までに 「産業用電気設備の保守点検」 について参考になる1つの資料として、公益社団法人石油学会が発行している石油学会規格 「JPI-8S-4-2018 電気設備維持規格」 があります。 この規格の 「第5章 電動機編」 をご参考にして下さい。 この規格の概要について、質疑応答 2021-0115 「産業用電気設備の保守点検」で紹介しています。
センシング技術を補完する形で、実物劣化評価を最大限活用するにあたっての御社の知見、具体的な運用方法について :
A社の方からの回答:
当社ではスポット的にセンシング技術を活用している事業所があるかもしれませんが、定期的な保全計画(点検手法や周期の決定)にまでは反映していません。 必要だと判断した時スポット的に実施している工場はあるかもしれないと思っています。
B社の方からの回答:
運転中に事故トラブルを起こさないように振動、異音、軸受温度、グリスアップ監理を行っています。 重要なモータについては前記の他に運転中(センシング)オンライン診断を行い予防保全しています。
C社の方からの回答:
モータなどの回転機器について、転がり軸受に異常が推察された場合、交換した軸受を解体し、傷などの異常発生個所や程度について、目視や電子顕微鏡を用いて評価いたします。 また、軸受交換前の振動診断結果と実際の軸受解体結果の整合性確認を行います。 目的は、軸受傷などの異常が発生していることを確認することだけではなく、傷などの異常に至った根本原因(過大負荷、設置、取扱など)を明確にして、整備内容に反映することです。 また、必要に応じ、異常程度を踏まえ、振動監視の良否判定値に反映します
事務局より :
電動機軸受の運転中センシング技術については、質疑応答 2023-0228 「電動機軸受の運転中センシングおよび非破壊試験による劣化診断技術」をご参照下さい。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)