質疑応答 2023-0241 接地と接地抵抗(接地抵抗の定義)で、「接地抵抗は大地抵抗率に比例する」ことを学びましたが、大地抵抗率とは何か、大地抵抗率に影響を与える土質の種類、土質に含まれる水分量、温度による影響などについて説明して下さい。 大地抵抗率の測定方法についても教えて下さい。
抵抗率は、物質ごとに一定の抵抗率を持っています。 銅、金、アルミニウム、亜鉛、鉄などのような電気を流しやすい低抵抗率のものを “導体” といいます。 先に示した、接地線や接地極は、銅、鉄など導体で構成されているため、10-7~10-8 Ωm(温度条件20℃)という非常に低い抵抗率となっています。 一方、乾燥木材、ガラス、硬質ゴム、ポリエチレンのように電気を流しにくい高抵抗率の物質を “絶縁体” と呼びます。 大地の持つ抵抗率は、“大地抵抗率” と呼びます。 大地抵抗率は 数Ωmから数万Ωm くらいの値を示します。 つまり、導体と絶縁体の間くらいの数値です。 更に、この大地抵抗率は、導体や絶縁体とは違って独特な性質を持っています。 まずは、大地抵抗率を知る上で必要となる大地について説明します。
1. 大地について
(1) 地質と地層
大地の表面の形を「地形」といいます。 地形は、山、谷、平地など、その土地の平面や高低などの形状のことを示します。 これらの地形を形成している大地は、様々な岩石や土などでできています。 例えば、畑に行けば土があり、河原に行けば石がたくさんあり、起伏の激しい山岳地に行けば強固な岩盤がみられます。 この岩石や土の性質や状態を 「地質」 といいます。 大地の表面には様々な種類の地質が見られます。 しかし、表面を覆っている地質と同じ種類の地質が大地の下にずっと詰まっているとは限りません。 様々な種類の土や岩石などが積み重なって構成されています。 これを 「地層」 と言います。 この地層と接地工事との間には大きな関係があります。 軟らかい地層であれば、接地極の埋設工事は容易ですし、硬い地層であれば接地極の埋設工事は困難を極めます。
(2) 地質にはどのようなものがあるの?
はじめに、土についてです。 土は、土粒子相互間の結合力が弱く、土粒子の分離が比較的容易であるような未固結の状態であるものを呼びます。 これを分類する場合、一粒あたりの粒子のサイズで分類します。 粒形の大きさと土の種類(地質)との関係について 表1 に示します。
次に、岩石についてです。 岩石は、それを構成する粒子相互間の結合力が強く、固結した状態であるものを呼びます。 一般に、岩石は成り立ちの違いにより、火成岩、堆積岩、変成岩に大別されます。 また、それを構成する物質によって、更に細かく分類されます。 例えば、堆積岩の中でも、泥が堆積して固まれば泥岩になりますし、砂が固まれば砂岩という種類に分けられます。
(3) 地質と大地抵抗率
金属などの抵抗率は、比較的に定量的な値が存在します。 しかし、大地抵抗率は、同じ地質であっても、必ずしも同じ値にはなりません。 その理由は、そこに含まれる水分量、その水分に溶解している物質の種類や濃度、土の粒子の大きさや密度 (土の締まり具合)、含まれる成分など様々な条件が違っているからです。 接地工事を行なう人の中には、「土質が特定できれば接地抵抗値 (大地抵抗率) も特定できる」 と思われている方も多いのですが、そのような思い込みは非常に危険です。 土質が特定されたとしても、定量的な大地抵抗率値を示すことはできません。 よって、そこから接地抵抗値を推定することは困難となります。
参考までに 表2 に代表的な土質の大地抵抗率の例を示します。 この表に示された数値幅を見ても分かるように、各土質とも非常に広い幅の値を持っていることが分かります。 なお、ここに示す数値は、概略的にまとめたものです。 全てがこれに当てはまるものではありませんのでご注意ください。
表1 土(未固結)の分類 表2 土や岩石(地層)の大地抵抗率の一例
2. 大地抵抗率の測定
(1) 大地抵抗率の測定方法
大地抵抗率の測定は、主に次のような方法があります。
- 試料による測定法
- 接地極の接地抵抗値から算出する方法
- 電気探査法(ウェンナーの四電極法ほか)
- 電磁探査法
- 電気検層
これらの手法は、それぞれ一長一短があり、接地調査には不向きなものもあります。 一般的な接地調査では、接地極の接地抵抗値から算出する方法 や 電気探査法(ウェンナーの四電極法)が多く採用されています。
(2) 電気探査法(ウェンナーの四電極法)
接地調査でよく用いられる大地抵抗率測定の一つとして、電気探査法(ウェンナーの四電極法)を紹介します。 電気探査とは、地表面などから地中へ電流を流すことによって地下の電気的性質を測る手法です。 電気探査にも様々な測定手法がありますが、接地調査では、比較的、手軽にできるウェンナーの四電極法が広く用いられています。 この手法は、写真1 に示すように測定装置、地表面に設けた4本の電極、各電極を結ぶ測定線から構成されます。 この測定手法は、掘削せずに簡単に大深度の大地抵抗率を推定することができるというメリットがあります。 その一方、調査には専門の測定器が必要となり、得られたデータを解析し、接地設計に必要な大地パラメータに変換する作業は熟練を要するなど、専門家でないと難しいところがあります。
写真1 ウェンナーの四電極法の電極配置
(日本地工株式会社の方からの回答です)