接地抵抗を正確に測定するためには、測定補助接地極(電流極、電位極)の離隔を大きくとらなければなりません。 しかし、接地抵抗計(3極法)で離隔を大きく取り過ぎると、正確に測定できない場合があります。 元々、接地抵抗計は発変電所のメッシュ接地のような大規模な接地体を測定する目的で作られたものではありません。 そこで、大規模接地体に用いられるものが「電圧降下法(電位降下法ともいう)による接地抵抗測定」です。 この測定方法にも様々な手法がありますので、順を追ってご紹介します。
本項では、《発変電規程 JEAC 5001 第6-3節 接地抵抗測定》に記載されている《電圧降下法による測定》に準じて電圧降下法の測定原理をご紹介します。 なお、発変電規程 JEAC 5001 は、最新版を参照して下さい。
図1 の回路において電流回路に電流を流し、デジタルマルチメータで通電時の接地極の電位上昇Vsを測定します。 接地極の接地抵抗Rは電流回路に流れた電流 Is と Vs により (1) 式にて表されます。
1. 商用電源による測定
商用電源による測定とは、図1 に示す測定回路系において商用電源とデジタルマルチメータなど(高入力インピーダンス電圧計)を用いた電圧降下法による接地抵抗測定のことをいいます。 一般的に「電圧降下法」というと商用周波数で測定するものを指します。 この測定法では、電圧回路に対する誘起電圧の影響や接地電流などによる大地浮遊電位の影響が出てきます。 これらの影響を除くために、以下のような手順で測定します。
- 大地浮遊電位 Vo(図1のIs=0〔A〕時の高入力インピーダンス電圧計の読み)を測定します。
- 接地網に電流を注入し電位上昇Vs1(図1のIs〔A〕時の高入力インピーダンス電圧計の読み)を測定します。
- 電流の極性を逆転し電位上昇Vs1(図1のIs〔A〕時の高入力インピーダンス電圧計の読み)を測定します。
- 接地網の電位上昇の真値Vsoは、図2 のベクトル図より (2)式 で与えられます。
ここに発生する浮遊電位は常に揺らいでいる(一定の数値を示さない)場合が多くあります。 そのため、接地電位Vsoは大地浮遊電位Voよりも十分に大きくなるように電流を与えなければなりません。 なお、発変電規程では「接地電流を20A以上の電流値とすることが望ましい」とされています。
2. 異周波交流電圧降下法
異周波交流電圧降下法とは、図1 に示す測定回路系において、商用周波数から僅かにずらした周波数(45・55・65HZ)電源とその周波数成分の信号のみしか受け取ることのできない電圧計と電流計からなる接地抵抗測定法です。この測定手法も電圧降下法の一種ですが、商用周波数を用いた測定を「電圧降下法」と呼ぶのに対し「異周波交流電圧降下法」と呼んでいます。 この測定法は、電圧降下法でも測定できないような劣悪なノイズ環境であっても測定が可能です。 また、測定電流・電圧も小さくて済むため、測定時の感電災害や稼働中の設備に対しての影響がほとんど無く、コスト面でも有利となります。
なお、近年、本測定方法について一部誤認されているケースが見られます。 例えば、発電機で45Hzや55Hzの周波数電流を流し込み、
一般のデジタル電圧計によって測定したものを異周波交流電圧降下法と言っているケースです。 本来の異周波交流電圧降下法とは、自身の測定器から発せられた波形(周波数)成分のみしか検出できない特殊な電圧計・電流計を使った測定になります。 ご注意ください。
(日本地工株式会社の方からの回答です)