接地抵抗は、土壌の温度や水分量などが季節によって変動したり、接地極の経年劣化などによって変化すると思います。 このような要因によって接地抵抗がどのように変動・変化するのか教えて下さい。 その対応策についても教えて下さい。
接地抵抗値は、様々な要因で変動します。 そのため、接地設計では「接地抵抗は変動する」ということを考慮しなければいけません。 接地抵抗の変動には、周期的な変動を示す「季節変動」と、ランダムな変動を示す「経年変化」の合成で成り立っています。 以下に接地抵抗値の変動の要因について解説します。
1. 大地抵抗率の変動に伴う接地抵抗値の変動
接地抵抗の変動は、大地抵抗率の変動に依存します。 これは、大きく分けて温度と水分量の変動に伴い変動します。 この2つの要因について解説をします。
(1) 土の温度と抵抗率の関係 (図1参照)
土の温度と抵抗率には、興味深い関係性があります。 図1 に土の温度と抵抗率との関係の実験例を示します。 これによれば、温度が上昇すると抵抗率が低下し、温度が下がると抵抗率が上昇します。 つまり、夏のような気温が高い時期は接地抵抗値が下がり、冬のように温度が下がると接地抵抗値が上昇します。
更に、温度が零度以下になると、その抵抗率の上昇度合いは非常に大きくなります。 これは、土に含まれた水分が氷になったことによります。氷はほぼ絶縁物といってよいほど電気を流さない物質ですので、土中の水分が氷になることによって、急激な抵抗率の上昇が見られます。 特に、凍土が発生する地域での接地工事は、凍結深度以下に施工するよう注意が必要です。 なお、ここに示す変動は地域差や地中の深さによって違いがありますので、必ずしも下記のグラフと同じような線を示すわけではないので、その点をご承知おきください。
(2) 土の含水率と抵抗率の関係 (図2参照)
一般的に、土や岩石の抵抗率は、含まれる水分量が多いほど抵抗率は低くなる傾向にあります。 ただし、土や岩石の保水性には、その種類によって様々な特性があります。 図2 に砂質土の含水率と抵抗率の関係を示します。 なお、全ての土が 図2 と同じような値となるわけではありません。 あくまでも、このような傾向を示すものと捉えてください。 なお、横軸 に示した土の含水率とは、粒子の質量に対する水の質量で表されます。 計算式で表すと 「 土の含水率 = 土壌水分の重量 ÷ 水分を含む土の重量」のようになります。
2. 接地極の経年劣化
接地電極には、鉄や銅などの金属が用いられます。 しかし、このような硬くて丈夫な金属であっても、土中という環境下に長年放置されると経年劣化(腐食)という厄介な問題が付きまといます。 接地極の腐食が少しずつ進行すると、それに伴って接地抵抗値が上昇し、やがてその機能を失って行きます。 そのため、接地極の腐食が激しい場所では、事前に腐食対策を検討するケースもあります。
接地電極の腐食に対する寿命は、施工時のほんの少しの注意で何年も何十年も延ばすことができます。 例えば、接地電極の材料に銅や亜鉛めっき鋼のような耐久性の高い素材を使用するのも対策の一つです。
3. 接地抵抗値の変動に対する対応策
接地抵抗値は、上記に示したような季節変動と経年的変動によって常に値が変わっています。 そのため、接地工事を行う際は、必ず余裕を見た抵抗値を確保しておくことが必要です。 また、この変動幅についても地域的な特性や気候変動による差異がありますので定量的な数字を表すことは困難です。
(日本地工株式会社の方からの回答です)