電気は大量に貯めることが出来ないので、送配電系統は、需要と供給のバランスをとって、周波数が一定(東日本は50Hz、西日本は60Hz)になるように運用しています。 では、どのような要因によって周波数が低下するのでしょうか? その要因について教えて下さい。 系統の安定性、発電機などの電気設備の安定性を維持するために必要な周波数の許容変動範囲、太陽光発電設備や風力発電設備などの周波数の許容変動範囲についても教えて下さい
ご質問にあるように、送配電系統は、需要(電気の使用量)と供給(電気の発電量)が一定になるようにバランスをとって、周波数が一定になるように運用しています。 電気事業法 [1] において、小売電気事業者 [1] による供給能力確保の義務と、一般送配電事業者 [1] による周波数維持義務が課されており、「需要が増えて来たらどこかの発電所の出力を上げる、供給が増えてきたら出力を下げる」 という調整を常に行って行っています。 どのような方法で調整しているかについては、質疑応答 2023-0255「送配電系統で周波数低下が生じた場合の対応策」で概要を説明します。 では、どうして周波数が低下するのでしょうか? 近年、以下のような要因で需給のバランスが崩れ広域にわたり周波数が低下するという不具合が発生しています。
- 落雷による発電所脱落
- 地震の振動による発電機トリップ(保護用振動計動作)
- 地震によるボイラチューブ損傷などのトラブルによる発電能力低下
さらに、大型台風など大規模自然災害が多く発生し、発電設備に影響を与える懸念事項が増えている状況にあります。 このような自然災害に対して、系統の安定性を維持するための対策として下記のような方法が考えられます。 これらは、時間的に過渡的な事象、数秒の事象、数分の事象、数時間の事象など、状況に応じて適切な方法が実施されます。 例えば、揚水や水力発電の起動は数秒の変化に対する対応はできません。
- 発電設備のガバナ制御(速度調整)
- 発電設備の出力制御(出力増減)
- 揚水や水力発電の起動(停止)
- 周波数低下が継続した場合の最後の手段として、負荷遮断、場合によっては計画停電、など
従来から発電設備は連続運転の仕様を、周波数低下-5%、継続時間2秒と規定している電力会社が多く、2019年に系統連系要件により一般送配電事業者 [1] に対し、これが標準化されました。(従来は電力会社毎に概ね同じような基準であったが、統一されていませんでした。) ご参考までに、東京電力の周波数規定は以下のとおりです。
- 常時周波数調整目標と調整範囲 : 50±2 Hz、15秒以内
- 連続運転可能周波数 : 48.5~50.5Hz、10分(あるいは、48.0Hz、1分)
- 運転可能周波数 : 47.5~51.5Hz、2秒
関連する質疑応答 : [1] 質疑応答2023-0260「電気事業法と関連事業および関連団体」参照
(石油学会の方からの回答です)