最近 話題になっているバッテリー・エネルギー貯蔵システム(BESS : Battery Energy Storage System)について、① BESSとは何か、② BESSの用途と活用、③ BESSの特徴と機能、などについて説明して下さい。
バッテリー・エネルギー貯蔵システム(BESS : Battery Energy Storage System)は、充電可能なバッテリーを使用してエネルギーを貯蔵し、必要に応じてそれを放出するシステムです。 BESS は、電力系統に連系し、状況に応じて電力の貯蔵や放出を行うシステムであり、蓄電池と PCS (Power Conditioning System : 電力制御システム) を組み合わせて、電力供給のトラブル時に1秒以内で対応することが可能になります。 このシステムは、電力供給を安定化させ、再生可能エネルギーの利用を強力に推進します。
BESS の用途と活用
BESS は、さまざまな環境や状況下でも、発電事業者が〔電力供給を止めない力〕を保持するための最適なソリューションとされています。 BESS は、再生可能エネルギーの活用や導入が加速する中、天候により出力が左右される不安定さというこの方式の弱点をカバーし、電力の安定供給を行いながら、収益の増加、最大化を行う上で欠かせない価値を提供します。
以上のような特性から、BESS は、① 電力供給の安定化、② 再生可能エネルギーの有効活用、③ 送電網の周波数調整と電圧制御など、様々な用途で活用されています。 具体的には、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー源の成長に伴い、火力発電所が段階的に廃止されている地域での BESS 設置、再生可能エネルギーで発電された電力をバッテリーに貯蔵しておくことで、電力会社が必要な時にいつでも使用できるようにする、ことなどです。 このような状況から再生可能エネルギーの拡大に伴い、世界的にBESS 市場が拡大し、質疑応答 2024-0312〔BESSの利点と再エネ設備への導入状況〕の〔BESS関連の企業〕の項に記載したような企業による開発競争が激しくなっています。
BESS の特徴と機能
再生可能エネルギーの導入が進むにつれて、これまで調整の役割を担っていた火力発電の割合が減少して行くため、電力会社は供給の突然の過剰または不足に即時対処しうる安定した電源を必要としています。 こうした課題に対する解決策の1つが BESS の導入です。 BESS の主な特徴と機能を纏めると以下のとおりです。
- エネルギー貯蔵 : BESS は、一つ以上のバッテリーを使用して電力を貯蔵します。 この貯蔵されたエネルギーは、さまざまな用途で電力を必要とする時に使用することができます。
- 効率と柔軟性 : BESS は、他のエネルギー貯蔵システムに比べて高い効率と柔軟性を持っています。 また、機器やデバイスへの電力供給時の応答時間が速く、全体的なコストを低く抑えることができます。
- 技術構成 : BESS は、インバーター、制御コンポーネント、統合センサー、複数のバッテリーモジュールなどから構成されます。 インバーターは直流電力を交流電力に変換し、制御コンポーネントはバッテリーの充電と放電を管理し、電力の流れを調整します。 統合センサーは BESS のパフォーマンスと状態を監視し、最適な運用のためのデータを提供します。
- 応用例 : BESS は、ピークシェービング、マイクログリッド、無停電電源装置(UPS)など、さまざまな応用があります。 ピークシェービングでは、貯蔵エネルギーを使用してピーク電力需要の一部を満たし、電力コストを削減し、既存の電力網への新たな発電所の建設やアップグレードの必要性を減らすことができます。 マイクログリッドでは、BESS は停電時にバックアップ電源を提供し、ピーク需要期間中にエネルギーを提供することで電力網を安定化します。
BESS は、再生可能エネルギーの利用拡大に向け、太陽光や風力で発電された電力の変動を吸収し、適切に電力系統につなぐために、その普及が期待されています。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)