電力系統に接続されるバッテリー・エネルギー貯蔵システム(BESS:Battery Energy Storage System)の安全性などについて規定した国際規格と国内規格について説明して下さい。
IEC 62933-5-2 : 2020 と JIS C 4441 : 2021 は、両方とも〔電力系統に接続されるバッテリー・エネルギー貯蔵システム(BESS:Battery Energy Storage System)の安全性〕について規定しています。 JIS C 4441 : 2021 は、2020年に第1版として発行された IEC 62933-5-2 を基に、日本の実情などを考慮し、技術的内容を変更して作成された日本産業規格です。 つまり、JIS C 4441 : 2021 は、IEC 62933-5-2 : 2020 の国内対応規格となっています。
このような国際規格と国内規格についての質問の場合、国際規格を先に説明することが多いのですが、〔IEC 62933-5-2 : 2020は、日本が企画原案を策定し、日本が提案して規格開発プロジェクトを開始した結果、この規格がIEC規格として承認され発行された〕という経緯があることから、ここでは国内規格 JIS C 4441 : 2021 から説明することにします。
国内規格 JIS C 4441 : 2021
JIS C 4441:2021 の正式なタイトルは〔電気エネルギー貯蔵システム – 電力システムに接続される電気エネルギー貯蔵システムの安全要求事項 – 電気化学的システム〕であり、2021年3月22日に発行されました。 英語では〔Electrical energy storage (EES) systems – Safety requirements for grid-integrated EES systems – Electrochemical-based systems〕と表記されます。
この規格は、電力系統に接続されるバッテリー・エネルギー貯蔵システム(BESS : Battery Energy Storage System)のシステムとしての安全要求事項について規定しており、〔① 適用範囲 : この規格は、設計から運用期間終了時の管理までの全ライフサイクルに適用することが可能、② 安全要求事項 : 人命に関わる火災・爆発・有毒ガス滞留への対策として、蓄電池ユニットからの出火・延焼を防ぐための対策やその対策を確認するための耐類焼性試験等、システム全体として必要な安全対策および確認方法、③ システムの検証および試験 : BESS の検証および試験、④ ガイドラインおよびマニュアル : BESS の安全性に関するガイドラインおよびマニュアル〕 について規定しています。 現在、JIS C 4441:2021 は、関係機関により、電気事業法等安全規制への引用に係る検討がなされています。
国際規格 IEC 62933-5-2 : 2020
IEC 62933-5-2 は、国際電気標準会議(IEC)が発行した国際規格で、電力系統に接続される電気エネルギー貯蔵システム(EES)の安全要求事項について規定しています。 IEC 62933-5-2 の正式タイトルは、〔Electrical energy storage (EES) systems – Part 5-2 : Safety requirements for grid-integrated EES systems – Electrochemical-based systems〕で、2020年4月16日に発行されました。 日本語では、〔蓄電(EES)システム-第5-2部:グリッド統合 EES システムの安全要求事項-電気化学的システム〕と表記されます。
この規格は、前述のように、日本が企画原案を策定し、日本が提案して規格開発プロジェクトを開始した結果、この規格がIEC規格として承認され発行されました。 この規格の活用により、同システムの普及環境の整備が一層進むことが期待されています。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之