質疑応答〔2024-0300 系統解析の重要性を考える〕の 添付資料:系統解析の重要性(を考える)の中から、第3章、3.1.1項の 〔瞬低発生時の回転機(電動機)群の再始動/再加速について〕を紹介して下さい。
私の 添付資料 : 系統解析の重要性(を考える)の第3章、3.1.1項の 〔瞬低発生時の回転機(電動機)群の再始動/再加速〕 について説明します。 ETAP による解析事例も紹介します。
3.1.1 瞬低発生時の回転機(電動機)群の再始動/再加速について
大規模化学プラントでは、上位系統への落雷等によって瞬時電圧低下(瞬低、Voltage dip/sag)が発生した際に、一旦電源から脱落 (電磁接触器が OFF)し、または減速した電動機群を再始動/再加速する手段として、電動機群を幾つかのグループに分割し、グループ毎に順次再始動/再加速させる方法を取ることがあります。 一斉に再始動/再加速させる方法では、系統末端の電圧が過剰に低下して電動機の加速渋滞が発生し、または電源供給フィーダの過電流保護が動作する等の障害が発生する可能性があるためです。 このことは、Oil & Gas・石化業界では有名な設計・施工標準である Shell 社の Design and Engineering Practices(Shell DEP)にも記載されています。 皆様もご確認ください。
図1 に ETAP による解析事例を掲載します。 これは、モデル系統を使用し、系統に瞬低が発生した際の誘導電動機群の再始動/再加速について、全機一斉とグループ別ケースを比較するために実施した例題です。 66kV系統に継続時間が0.2秒で電圧低下が80%(残留20%)の瞬低が発生した条件で解析を行っています。
(旭化成株式会社 加戸良英)
事務局より:
- この解析事例は、図1 (a) の一般検討で使用したモデル系統において、(b) 全ての電動機を一斉に再始動/再加速した場合と (c) 電動機群を3グループに分割し順次再始動/再加速した場合の、① 66kV Busの電圧、② 電動機のすべり、③ CB2の電流、について比較しています。 (c) のように、電動機群を3グループに分割し順次再始動/再加速することにより、① 66kV Busの電圧は70%を下回らない、② 電動機のすべりの低下が大きくなる(Pump3の場合、16%=>54%)、③ CB2の電流は大電流が長時間継続することが無くなる、ことが分かります。
- このように〔電動機群をいくつかのグループに分割して順次再始動/再加速〕する方式とした場合、母線の電圧降下、系統を流れる電流など、系統にとって優しい結果になります。半面、電動機の回転速度の低下が大きくなる、減速している時間(場合によっては停止している時間)が長くなることなどにより、質疑応答 2024-0318 系統解析の重要性(瞬低発生時の誘導電動機群の再始動/再加速対策における失敗事例)のように化学プラントの運転にとって問題が生じることがあります。
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