現在、海外にて接地工事を実施しています。 接地の種別を避雷接地、電気接地(B種)、静電接地、弱電用接地に分けてそれぞれ接地極を設け、基本的には電気的な接続が無いようにしています。〔これらの接地極間の距離は、200mm程度で施工する予定です。 大地の抵抗は0だという考えから、どこに接地極を設置しても同じであろうと考えているのですが、〕 色々と調べているうちに電位干渉を考慮すると、極力、離したほうが良いであろうと行きつきました。 下記の点について教えて下さい。
Q1. 電位干渉はどのような悪さをするのでしょうか?
Q2. 電位干渉は、弱電用接地にのみ対応する必要があると思います。 電位の上昇によって、静電接地、B種接地に電流が流れても問題が発生するのでしょうか?
まずは、ご質問にお答えする前に、内線規程にある接地極の離隔に関する項目をご紹介します。
『内線規程(JEAC 8001-2022)1350-16 避雷針用接地線との距離』に、電灯電力用、小勢力回路用及び出退表示灯回路用の接地極並びに接地線は、避雷針用の接地極及び接地線から2m以上離して施設すること(以下、省略)と記載されています。 また、『国土交通省大臣官房庁営繕部監修 電気設備工事監理指針(令和4年度)(図2.17.11)』にも同様の内容が記載されており、ここでは加えて、通信用接地極と雷保護用接地極との離隔は5m以上と記載されています。
Note 1 : ご質問中の〔これらの接地極間の距離は、200mm程度で施工する予定です。 大地の抵抗は 0 だという考えから、どこに接地極を設置しても同じであろうと考えているのですが、〕の件、接地極間の距離については、上記の規程および指針 を、大地の抵抗については、質疑応答 2023-0242 〔大地抵抗率〕をご参照下さい。
それでは、上記の質問 Q1よびQ2 について、それぞれ A1およびA2 としてお答えします。
A1 (Q1の回答) :
電位干渉とは、図1 に示すようにAとBの2つの接地極があった場合、仮に接地極Aに電流が流れ込んだ際にもう片方の接地極Bに電位上昇が発生するような現象のことを言います。 接地極Bに発生する電位上昇が、ある値を超えるようであれば、感電災害や機器の破損、機器の誤動作などを招きます。
A2 (Q2の回答) :
電位干渉は、弱電用接地にのみ対応とは限りません。 例えば、図1の状況を例に問題となるケースについて考えてみます。 まずは、前提条として、接地極AがB種接地の接地極で、混触による事故によって接地電位が150Vまで電位上昇が発生したとします。 接地極Bは、静電対策用の接地極(D種接地)で、接地極AとBは非常に近接している状況です。 そのため、接地極Bには70%の電位干渉があるとすると105Vの電位が発生するということになります。
次に、接地極Bが 図2に示すような遠方にある設備の接地極だったとします。 すると、その設備には105Vの電位がかかることになるため、そのような状況時に人が触れれば感電事故に至る可能性がでてきます。 このような状況を避けるために、接地極同士の離隔を設けることが必要になります。 2つの接地極の理想的な離隔距離は、無限大の距離を離さなければ完全に干渉をさけることができないということになりますが、現実には電位干渉が一定の範囲 に収まれば相互に独立したものとみなせます<See Note 2>。
Note 2 :
上記の 内線規程(JEAC 8001-2022)1350-16 の規定〔避雷針用の接地極及び接地線から2m以上離して施設すること〕 、および 国土交通省大臣官房庁営繕部監修 電気設備工事監理指針(令和4年度)(図2.17.11) の〔通信用接地極と雷保護用接地極との離隔は5m以上〕と記載された値が一つの目安になると思います。
しかし、接地電流が流れ込む接地極の電位(例えば、図2 の接地極A)は、接地極の接地抵抗値やそこに流れる電流値によって変わります。 更に、電位分布の傾度は、大地抵抗率や接地極の形状によって異なりますし、電位干渉を受ける接地極(例えば、図2 の接地極B) では、感電保護の観点のみならず、接地極につながっている機器の保護なども検討要素になる場合もあります。従って、必要な離隔距離を求めるためには、それぞれの設備や環境に応じて検討しなければなりません。
例えば、感電対策を検討する場合、具体的には、質疑応答 2023-0240 〔感電と感電対策〕の<質疑応答 2022-0170 の抜粋>に記載したように、接地電位 (GPR) を求めて、接触電圧および歩幅電圧を計算し、これらが例えば、 IEEE80 の許容値に収まっているかどうかを確認することが必要です。
(日本地工株式会社の方からの回答です)