高圧の発電機には 5/6 Pitch Winding(5/6ピッチ巻線)、低圧の発電機には3/4 Pitch Winding(3/4ピッチ巻線)が主に使われると聞きました。 Winding Pitch とは何を指すのか、また主な種類とメリット・デメリットや使い分けの理由を説明して下さい。
Winding Pitch とは発電機などの固定子巻線 (Stator Winding) の巻き方のことで、コイルピッチが磁極ピッチと等しいものを全節巻(Full Pitch)、磁極ピッチよりも短いものを短節巻(Fractional Pitch or Short Pich)といいます。
発電機の Winding Pitch は出力電圧波形の高調波成分と基本周波数電圧のレベルに影響を与えます。 全節巻は短節巻よりも大きな起電力が得られますが、いずれの高調波電圧も全く抑制されることがないので、出力電圧波形に多くの高調波成分が含まれます。 短節巻は基本周波数電圧が多少低下しますが(界磁の調整で補償可能)、巻きピッチの次数に応じた高調波の抑制効果があり出力波形を大幅に正弦波に近づけることができます。
さまざまな次数ピッチの巻線がありますが、使用する上での利点が多い2/3ピッチ巻線と5/6ピッチ巻線が広く利用されています。 適切に設計された発電機であれば、2/3ピッチ巻線でも5/6ピッチ巻線でも全高調波歪みのレベルに大きな違いはありません。
発電機の Winding Pitch は、並列運転をしたときの中性点を通した循環電流と中性点接地方式にも影響します。 もし、異なるピッチの巻線を持つ発電機の中性点を相互接続することが避けられない場合には、注意深く検討して必要な対策をとることが必要です。
2/3ピッチ巻線と5/6ピッチ巻線の主な特徴は次の通りです。
- 2/3ピッチ巻線
- 3次(その奇数倍を含む)高調波の発生をほぼゼロに抑えることができます。
- 5次高調波と7次高調波を5/6ピッチ巻線よりも多く含みます。
- 一般に零相インピーダンスが小さいので、地絡電流が比較的大きくなります。
- 5/6ピッチ巻線
- 3次高調波が含まれます。
- 5次と7次高調波の含有率が2/3ピッチ巻線よりもかなり低い値となります。
- 同じ定格の発電機を2/3ピッチ巻線よりもコンパクトに(銅や鉄などの材料を少なく)作ることができます。このことは、より大型の発電機の場合に有利になります。
直接接地や3相4線回路を使用することの多い低圧系統には、3次高調波の発生がない2/3ピッチ巻線が適しています。 一般に、高圧系統には中性線がないので3次高調波の含有が大きな不都合になりません。 また、高圧系統では一般に低圧系統よりも大型の発電機が使用されます。 このようなことから、高圧発電機には5/6ピッチ巻線が広く使用されています。
参考: 2/3ピッチ巻線と5/6ピッチ巻線の発電機を使用する上での注意点を考えます。
- 中性点が直接接地された系統には、2/3 ピッチ巻線の発電機を使用するのが適しています。 2/3 ピッチ巻線は、発電機で生成される電圧に3次高調波成分を含まないため、3 次高調波電流の循環による余計な熱損失の問題を考慮する必要がありません。
- 中性点が直接接地されていない系統では、5/6 ピッチ巻線の発電機でも問題ありません。 5/6 ピッチ巻線は(2/3 ピッチ巻線よりも)5次と7次の高調波が大幅に少ないことやコンパクトに製作できる可能性があることが、さらなる利点となります。
- 低圧3相4線回路では、給電先の多様な単相負荷(VSD、IT機器、整流回路等を含む)で多くの3次高調波電圧が発生します。 中性線(N相)には3線負荷の不平衡分に加え、これらの負荷からの3次高調波電流が加算されて流れます。 したがって、発電機から更なる3次高調波電流を中性線へ流し込むおそれのない2/3ピッチ巻線が最も適しています。
- 発電機を並列運転する場合には、同じ巻線ピッチの発電機を使用することが望まれます。 例えば、2/3ピッチ巻線と5/6ピッチ巻線の発電機の出力波形には少し違いがあります。 これらを並列運転すると、任意の瞬間に 2 つの発電機電圧の差により生じた3次高調波電流が巻線、中性線(もしあれば)や接地導体に余計な発熱を生じます。
- 複数の発電機が並列に接続され、それらの中性点が直接接地された場合や中性線(N相)のある3相4線系統では、すべての発電機を出力電圧に3次高調波電圧を含まない 2/3 ピッチ巻線に統一するのが最も適しています。
(エンジニアリング会社関連の方からの回答です)