中性点を低抵抗接地している3相3線11kV発電機を無負荷(出力用遮断器オフ)で運転しているときにも、接地抵抗に数アンペアの電流が流れます。 考えられる理由は?
産業プラントの発電機には、5/6ピッチ巻線と2/3ピッチ巻線の発電機が広く使用されています。 一般に、回路中に中性線(N相)がなく、低圧系統よりも大容量機が使われる高圧発電機には5/6ピッチ巻線がよく使われます。 5/6ピッチ巻線と2/3ピッチ巻線の説明は、質疑応答2024-0328〔発電機のWinding Pichとは?〕を参照下さい。
5/6ピッチ巻線の発電機の電圧波形には、その特性上ある程度の3次高調波が含まれます。 このため、接地抵抗を介してある程度の零相電流が流れ、中性点の電位が上昇します。 発電機を発注する場合には、メーカーから入手するデータに高調波成分も含め、設計に反映するようにして下さい。
なお、少ない電流でも連続して流れると抵抗器は発熱します。 接地抵抗器を屋内に設置する場合や密閉度の高い盤に収納する場合には、盤面の温度が気になるかも知れません。 5/6ピッチ巻線を低抵抗接地する場合には、接地抵抗の材質・構造の設計や放熱設計を適切に行えるよう、地絡保護との関係で指定する短時間定格(例えば、400A、10秒)だけでなく、発電機メーカーから入手したデータを参考に、連続定格(例えば、5A、連続)も指定したほうが良い場合もあります。
参考: 高圧発電機を並列運転する場合の主な手法を紹介します。
ここでは、典型的なケースとして、同一設計の高圧発電機が3相3線の高圧系統に接続され、(多種多様な負荷を持つ)低圧系統へはΔ-Y巻線の変圧器を介して接続されるという回路構成を考えます。 発電機で3次高調波が発生したとしても変圧器のΔ巻線でとどまり、低圧側に流出することはありません。 したがって、2/3ピッチ巻線の発電機と5/6ピッチ巻線の発電機のいずれを使用しても問題ありませんが、並列運転する場合には注意が必要です。 次の二つの方法が広く採用されています。
A.すべての発電機の中性点を抵抗接地する方法(主に北米で採用)
- 簡素な構成ですが、それぞれの発電機に接地抵抗器が必要です。
- 5/6ピッチ巻線の発電機はある程度の3次高調波電圧を発生します。 もし発電機間にインピーダンスの差があると、大地(アース)と接地抵抗を介して電流が循環します。 このインピーダンスの差は、一般に軽微な発電機の違い、ケーブル長の違い、接地抵抗値の違いなどによるものですが、通常は発電機と接地抵抗器を適切に設計・選定することで問題を回避できます。
- 並列運転する発電機の台数によって系統の接地抵抗値が変動します。 あらゆる運転パターンを、地絡保護等の設計に反映する必要があります。
- どうしても異なる設計の発電機の並列運転(5/6ピッチ巻線と2/3ピッチ巻線の並列運転も含む)が必要になった場合には、接地抵抗を接地リアクトルに変更することでこの方式を採用することができます。 ただし、リアクトルの選定・調整には慎重な検討が必要です。
B.運転中の発電機のうちの1台だけを抵抗接地する方法(主に北米以外の地域で採用)
- 運転中の発電機のうち1台だけを抵抗接地します。 それぞれの発電機に接地抵抗器を装備するのではなく、1台の接地抵抗器を共通で使用することが多いようです。
- 上記の場合、それぞれの発電機に接地抵抗器への回路をオン・オフするための断路機構が必要です。 接地する発電機の切り替えを容易にするため、断路器(又は遮断器)をまとめて収納した切換え盤(?)を設けることもあります。(どのような運転・切換えを目指すかにより、切換え盤にはさまざまな工夫が可能です。)
- 1台の発電機しか接地しないので、発電機間の循環電流を考慮する必要はありません。
- 並列運転する発電機の台数が変わったり、発電機の間に仕様の違いがあったりしても、系統の接地抵抗値への影響はありません。
(エンジニアリング会社関連の方からの回答です)