はじめまして。 某圧延工場の電気技術者です。 圧延ラインの更新で、海外製のベクトル制御誘導電動機(定格950kW 690V)を導入することになりました。電力ケーブルは日本国内製を選定する予定ですが、なかなか1kVクラスの高圧ケーブルを見つけることができません。3kV(価格的には6kVが有利)のCVTなどを使うのが一般的でしょうか? 海外製を扱うのは初めてなのでどなたか知見がありましたらご教授お願いします。
定格電圧690Vの電動機用の1kVクラスケーブルとして、日本でも下記のようなメーカーが製作していると思います。
- 株式会社フジクラダイヤケーブル(旧フジクラと三菱電線の電線部門の統合)
- プロテリアル株式会社(日立金属の電線部門を吸収)
- 住友電気工業株式会社
1kVクラスのケーブルは日本では高圧扱いとなり、電気設備技術基準に基づいて規格が定められています。具体的には、JIS C 3605 および 3606(See Note 1)が適用されます。また、これらのメーカーは、海外向にIEC(国際電気標準会議)の規格 IEC 60502-2(See Note 2)に準拠したケーブルを製作していると思います。具体的には関係するメーカーと相談して進めて下さい。定格電圧690Vの電動機用のケーブルとして、3kVクラスまたは6kVクラスのケーブルを使う場合の問題点として、下記のような問題が考えられます。
- 過剰なサイズと重量: 3kVクラスや6kVクラスのケーブルは、より高い電圧に対応するために厚みや太さが大きくなっています。これにより、必要以上の重量がかかり、取り扱いが難しくなる可能性があります。
- コストの増加: 高電圧用のケーブルは、材料や製造コストが高くなるため、経済的に不利になることがあります。
- 設置の複雑さ: 高電圧用のケーブルは、設置や保守に特別な対応が必要です。これにより、設置作業が複雑になり、時間や労力が増加する可能性があります。
- 安全性の問題: 高電圧用のケーブルは、適切な保護措置が取られないと、安全性に問題が生じる可能性があります。特に、接続部分や絶縁材料の選定には注意が必要です。
これらの問題を考慮すると、ケーブルメーカーと相談して、適切な電圧クラス(1kVクラス)のケーブルを使用することが推奨されます。
Notes:
- JIS C 3605:2002, 600 Vポリエチレンケーブル 600 V Polyethylene insulated cables (架橋ポリエチレンケーブルも含まれます), JIS C 3606:2003 高圧架橋ポリエチレンケーブル High-voltage cross-linked polyethylene insulated cables
- IEC 60502-2:1997, Power cables with extruded insulation and their accessories for rated voltages from 1kV(Um=1.2kV) up to 30kV(Um=36kV) – Part 2 : Cables for rated voltages from 6kV(Um=7.2kV)
この規格は、1kVから30kVまでの電圧に対応するパワーケーブルの基準を定めています。
私の想い:(エンジニアリング会社の方からの投稿です)
電圧区分については IEC に従って電技の改定が必要と思っています。今回の話もそうですが、今のままでは世界に取り残されてしまうと感じています。〔例: 世界の流れとして電気自動車の蓄電池充電電圧については直流800Vクラスが主流になりつつあり、充電器の電源電圧もAC690V等が採用される方向と考えられます。一方、これらの電圧は電技により日本では高圧扱い。〕 経産省 (?) に対してそのような動き(電技の規定をIECに合わせる)があれば是非とも協力したいと思っていますが、残念ながらそのような機会に出会えていません。