最近、外資関係の会社からIECによるArc flash解析に関する質問を受けることがあります。 IECによるArc flash解析手法、IEEE 1584による規定との比較等について教えて下さい。
IEC規格には、まだ、アークフラッシュエネルギーの計算に関する規定がありません。一方、欧州/ドイツには、主に低圧システムに適用される欧州/ドイツ規格DGUV-I203-078 があります。この規格に基づき計算された等価アークエネルギーは、IEC 61482-1-2「防護服クラス(クラス1およびクラス2)」に規定の等価エネルギーと比較されます。
現状では、IEC 60909 に基づき計算した完全短絡電流を基に、IEEE1584 のアークフラッシュ計算式を使用して事故エネルギーを計算することをお勧めします。
etap は、IEEE1584 によるアークフラッシュ事故エネルギーの計算に、IEC60909 による3相完全短絡電流を適用することができます。さらに etap には、欧州/ドイツ規格 DGUV-I 203-078 による計算機能が組み込まれており、IEC61482 による「活線作業-防護服 (Live-line work-protective clothing)」の評価を行うことができます。
(注意)この回答は2021年1月現在のものです。アークフラッシュに関する規格や規定は。度々改訂されますので、アークフラッシュの検討や解析を行う際には最新の情報を確認して行って下さい 。
(エルテクス設計株式会社 Leonald Manio さんからの回答です)
(事務局より)
現状のアークフラッシュ保護に関する規格および法規の関連を整理すると下記のようになります。ANSI/IEEE C37, IEEE1584, NFPA70, IEC 60909, IEC 61482-1-2, DGUV-I203-078 の関連について、混乱しないようにして下さい。
① アークフラッシュ保護は米国から始まった作業者の安全に対する規定です。米国では、ANSI/IEEE C37により完全短絡電流計算を行い、IEEE1584 にてアークフラッシュ事故エネルギーを計算し、NFPA70に基づき活線作業-防護服の評価を行います。
② IEC規格には、IEC 60909 に完全短絡電流計算の規定が、IEC 61482-1-2に防護服クラス(クラス1およびクラス2)に関する規定がありますが、まだアークフラッシュエネルギーの計算に関する規定がありません。
③ 一方、欧州/ドイツには、欧州/ドイツ規格DGUV-I203-078(主に低圧系統に適用)があります。