降圧トランス6600/400Vがあるとします。トランスの結線はΔ-Δ(Dd0)。二次側は非接地。
①400V低圧側に電動機駆動回路があり、漏電遮断器がある場合、トランスの結線はΔ-Δで二次側が非接地系統の場合、地絡した場合に検知できるのでしょうか?高圧受電設備の文献などを読んでいるとき、非接地系統の場合、地絡検出が困難な場合があるという記述を見て、一般的によくみる低圧回路ではどうなのだろうかと思いました。
また、高圧の地絡継電器では地絡方向性継電器があるのに低圧ではなぜ方向性判別の漏電遮断器がないのでしょうか?
2020-12-22 長谷良秀 記
「高圧の地絡継電器では方向地絡方向性継電器があるのに、低圧(400V)ではなぜ方向性判別の漏電遮断器がないのでしょう?」という疑問に答えたえたいと思います。
はじめに日本の電気システムを少し整理しておきましょう。
日本の場合
1)EHV系(187kV以上の系統、および沖縄県主幹線)
方向距離リレー(事故時の Va/Ia, Vab/Iab などを判定原理とする)が使われます。
2)高抵抗接地系(66~154kV系)
1線地絡時の事故相電流 Ia=3Io が数百Ampほどしか流れないので Va/Ia 原理のリレーは適用できず、代わりに零相電圧 Vo と零相電流 Io を入力として利用する零相地絡方向リレー(Vo/Io を判定原理とする)が多く使われています。
3)6kV配電系統(中性点非接地系)
日本の6kV配電系は “非接地系” と称されていますが、厳密にいえば “オープンデルタ結線のCTに高抵抗をつないで、1線地絡時に Ia=3Io=1~5 Amp 程度の地絡電流が流れるようになっています。微小な電流が流れるのですから厳密には微接地方式とでも称すべきかもしれません。1線地絡で地絡電流 Io がほとんど流れないので Vo/Io 式の方向リレーも事実上使えません。一般に長い配電線の地絡事故検出や事故区間検出は容易ではありません。配電線路の途中で樹木接地などが生じても地絡事故検出ができず火災などに進展したら大変ですから、今日も様々なリレー方式の開発の努力が続いています。
4)工場構内動力系系統
私企業の構内動力系統(変圧器がΔ―Δ結線の3~20kV級のばあいなど)では 3) 配電線の場合と大同小異ということになりますが、一般に1区間放射系統(直列複数区間構成ではない)である点は有利となります。
5) 工場構内低圧系(600V以下)
ご質問のあった400V回路の場合は文字通りに“中性点非接地”の回路でしょう。これはもう文字通り、Io が殆んどゼロの系統でしょうから零相電圧 Vo と零相電流 Io の大きさと位相関係を比較する判定原理が役に立たない。したがって方向性を判定するリレーが作れないということになります。
ご質問の解答は以上です。
事務局より:
長谷さんのご回答は、「 ① はじめに日本の電気システムを少し整理しておきましょう ② ところで質問の域を超えますが、・・・ ③ 折角なので、もう少し理論的な補足説明を下記いたします」の3段階に分けて記述しています。② および ③ を含む回答全体については、下記のファイルをクリックしてご覧になって下さい。
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