質問番号2020-0091 の質問のように、化学工場や製鉄所などの産業設備では数千台の電動機が運転しています。 そして、商用系統での落雷事故、構内での短絡事故や電源切換などによって瞬時電圧降下(瞬低)現象が生じたることが度々あります。
特に化学工場の場合は、このような場合でも工場を連続運転することが必要であり、瞬低後(電圧回復後)に電動機群が再始動順序に従て再始動するようにしています。 このような場合の電動機群の再始動順序のモデリング方法について教えて下さい。
ご質問に対し、電力系統解析系統ソフトウェア etap を用いた場合の方法について説明します。(etap については、株式会社エルテクス設計にお問合せ下さい)
一般的に ① 高圧電動機用の配電盤には、瞬低が生じても機構的に「開」することの無い遮断器が用いられているので、電圧回復と共に「再加速」する ② 低圧電動機用の配電盤には、瞬低が生じると離落する電磁接触器が用いられているので、電圧回復後に電磁接触器を再投入し、電動機を「再始動」することが必要です。
ここでは、低圧電動機の場合において、電動機群を再始動グループに分けて再始動するための「電動機群の再始動順序のモデリング方法」について説明します。
電動機再始動の設定方法を下図にまとめた。
1. 瞬低再始動グループの分類(ここでは、下記のように分類する)
① 電圧回復後、直ちに再始動始動するグループ => この例では、005sec としている。
② 設定した時間後に再始動するグループ => 再始動順序に従って、電磁接触器を再投入(再閉路)する。
=> この例では、4sec, 8sec, … としている(005sec は電磁接触器の動作時間)
③ 再始動しないグループ => 電磁接触器を閉じない(再投入しない) => 電動機停止
2. 瞬低再始動条件の設定方法
① etap は各母線に、Relay 27(低電圧継電器)と Relay 59(過電圧継電器)を設置することができます。
ここ機能を用いて、以下の要領で設定します。
② 母線電圧が 55% に低下したら(Relay 27 で検出)、この母線に接続された電磁接触器が離落する。
(002秒後に離落)=> 上図の「赤枠」参照
③ 同時に、Relay 59 を ON にする。
④ 母線電圧が 80% 以上に回復後(Relay 59 で検出)、瞬低再始動順序に従って電磁接触器を再投入する。
この例では、4sec, 8sec, …(005sec は電磁接触器の動作時間)=> 上図の「青枠」参照
上記の要領で瞬低再始動順序を設定した場合の、瞬低再始動解析結果(母線電圧)の例を下図に示す。